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住まいは、時と絆を結んでつながっていくもの。
色で家族の心を知り、形にするのが私の役目。

栗山恵(くりやま・めぐみ)

栗山恵(くりやま・めぐみ)



一級建築事務所「アトリエWALK」主宰


- WEBサイト -

アトリエWALK
アトリエWALK色彩研究室

家族が求める「家」を色彩で判断

 建築と色は、切っても切れないもの。建築家は、壁や床の色を自分で決めなければならないので、色にはいつも携わっていましたが、色によって心理状態が変わるという要素を私が取り入れ始めたのは4、5年前からです。曽祖父が瓦葺き職人、祖父と父が宮大工という家系の長女として生まれ、私自身も建築家の道に進み、今では妻であり、主婦、2児の母の立場で、女性の感性を住まいや店舗に活かす事を心がけているのですが、もともと人の心や潜在意識に興味を持っていたので、心と色が関係するのなら、家に住む人の気持ちを反映させたものができないかな、と思ったのがきっかけです。
 色の取り入れ方としては、建築やリフォームのご相談やご依頼をいただいた際に、ご家族の皆さんに色彩心理診断を受けていただきます。ハートマークの中を色鉛筆で好きな色に塗っていくのですが、それを見れば、ご家族がそれぞれどんなことを感じているのか、またそのご家族のバランスのようなもの、あるいはご家族に足りない色、などが分かってきます。さらに、ご家族全員の診断用紙を集めると、そのご家族が求めているものが見えてきます。例えば、あるご家族の場合は癒し、優しさ、包み込むようなものを求めていると判断できたので、その効果のある色を玄関周りに反映させました。また、さっぱりした感じのご家族には、柔らかい印象の色や「つなげる」役目の色を台所周りに持ってきたり…といった具合です。ボランティアとして公民館で行う体験や、建築の場での診断も含めると、これまでに約3000人の方にご体験いただいています。色彩心理診断を体験していただく方々に、ご自分の心の状態を知っていただき、さらに心の栄養ドリンクにしていただきたい、という思いをこめて、この色彩心理診断に「カラーさぷり」という名前をつけています。

いい家をつなげるための「絆」づくり

 私はいつも「いい家を作るためには、絆が大切なんです」という話をさせていただきます。絆には3つあって、それぞれ「夫婦関係」「親子関係」「嫁姑関係」で表せます。この3つの絆のバランスが取れていないと、いい家にすることはできません。外側の家は立派にできたとしても、特に弱い人――子供、お嫁さん、高齢者、この3つの立場の人達にしわ寄せがいきやすい結果となります。つまり、ご家族一人一人の心の状態を取り込んだ家にしないと、家族みんなが快適に住むことはできないのです。
ではなぜ「絆」が大切なのでしょうか。私が目指す家、住まいは、結婚して子供が生まれて、成人して旅立って行き、また戻って来て世代交代がある…そうやって、どんどんつながっていくものだと考えています。家を建てるために育てられた木は、生きてきた分の3倍は生きるといわれます。つまり木は60年――おじいちゃん、お父さん、孫の代まで育て続けて、やっと伐採され、住宅の梁や柱に使われる木になります。そして建材になった木は、本来なら180年持つはずなのです。なのに、家族の絆がつながっていないと、次の世代に受け継がれる事なく取り壊され、建て替えられることになります。それは大変な資源の無駄であるし、同時に、つながるはずの家族の「思い」も断ち切られてしまう気がします。
 現在、家や住まいは「買う物」と考えている方が非常に多いのですが、私は、家というものは「買う」のではなくて「つくり上げていくもの」だと思っています。
 私の役目はそのご家族がどんな生活をしたいかを探って形にしていくことだと思っています。事務所名アトリエWALKの「WALK」は歩くという意味ですが、「人生をともに歩いていく」、そのご家族と一緒に一歩ずつ着実に夢に近づいて行くという感覚を大事にしたくてつけた名前です。「絆」という形にならないものを大切に守り伝えていく感覚、ですね。
 だからこそ、ただ単に家を建てるだけではなく、その前後にあるものを、カラーを通じて感じてほしいと考えています。そして、「カラーさぷり」を通して心の状態や家族のあり方、そういったものを見直したり、気づくきっかけにしていただけたらとも思っています。

色彩で家族に手を差しのべる取り組み

 近々、色彩心理診断士協会を設立して、協会名の英訳であるColoring Method of Psychological Analysis Societyの頭文字をとって「COMPAS:コンパス」と名付けようと思っています。私のもとで色彩心理診断士養成講座を受講した診断士が現在12名いますが、彼女たちの持つ本業に、色彩心理診断士のスキルを加えて、活躍できる場を作ってゆきたいというのが設立の理由です。そしてそういう方々に、地域の中の子供たちや親子、困っている方々へ働きかけをしてゆけたらと思っています。私自身、色彩心理に興味を持ったのは、自分が子育てに悩み、子供の考えていることが色で分かると面白いなと思ったのがきっかけでしたから、私のように、子育てに悩んでいる方や、様々な人間関係、そして自分自身の問題で悩んでいる方々のために、様々なスキルを持つ色彩診断士としての彼女達のアプローチが役に立つのではないか…そう期待しています。
 家を建てる際の話に戻りますが、本来ならば、家族の問題というのは、家を建てようとするずっと前から始まっているものでもあります。私のもとに設計を依頼しに来られる方のほとんどは、すぐに家を建てたい方。大変残念ですが、家を建てている半年あまりの短い期間で、何年も積み重なった家族の問題が、魔法のように解決したりはしません。もちろん「なんとかしなきゃ」と思うきっかけにはなるかもしれませんが、その時点で優先されるのは「家を建てること」。設計の段階で家族の絆の大切さを説いても、時間が足りないのが現状です。
 だからこそ、家を建てる建てないにかかわらず、一緒に住んでいるご家族の心が今何をどんな風に感じているのか、お子さんの心が身の回りで起こっている事をどんな風に受け止めているのかを「カラーさぷり」で見つめ直してほしいと願っています。
「絆」をつなげていく作業は、家を建てる前から始まっているからこそ、私は最も正直に心を映し出す「色」で、その絆をつないでいきたいと思っています。

取材日:2010.10



静岡県磐田市生まれ 磐田市在住


【 略 歴 】

1997 岐阜県にてアトリエWALKを設立。潜在意識について学び始める
2002 静岡県にUターン
色彩心理学に出合う。カラーコーディネーター取得
福祉住環境コーディネーター取得
2006 「笑顔が溢れる家族を増やすよ!」プロジェクト始動。
「カラーさぷり」を各地で開催(袋井市協働まちづくり事業に認定される)
福祉用具専門相談員取得
2007 磐田市子育て支援課次世代育成会議委員(2年間)
磐田市の幼稚園の家庭学級出前講座講師として「カラーさぷり」活動(1年間)
2009 色彩心理診断士養成活動
2010 磐田市行財政改革推進審議会委員(2年間予定)

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