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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

メッセージ
富士山頂を目指し、3776人の「さくや姫」を

川勝平太(かわかつ・へいた)

川勝平太(かわかつ・へいた)


静岡県知事


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男女共同参画の現状は「まだ5合目」

 県内の男女共同参画社会づくりの現状は、富士山でいえば5合目くらい。まだ発展途上です。富士山頂にまつられている「木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)」にお褒めいただくには、もうひと踏ん張りしなければならないでしょう。
 その昔、江戸時代には、農家でも町のお店でも男女がともに働いていました。しかし、近代の産業化とともに、男性は会社で働き、女性は家庭を守り、子どもを育てるのが役割と考えられるようになってしまった。その頃は、女性が男性中心の社会に入っていくのは非常に苦労がありました。「学歴社会」と言われながら、女性が大学に入ると「お嫁にいけない」などと言われ、進学すら難しい時代が長く続いたのです。
 しかし今は、女性の社会進出が国の施策の重要な柱の一つとなっています。人々の意識も徐々に変わってきました。平成元年にはついに、女性の大学・短大への進学率が男性を上回ります。女性雇用者数も年々増え続けている。今の40代前半の人たちから下の世代では、学歴や就業における男女格差は縮小しつつあるわけです。
 その世代の人たちが、人事の決定権を持つ、人事部長あるいは会社の重役というポストを担うようになるころには、男女共同参画社会の具体像も描けるようになるでしょう。それを、いかに早めるか。少しでも早く実現させることが、現在の課題だと思っています。

「まず隗より始めよ」で、知事室から発信

 知事室では、女性の意見を聴きながら、女性的感性を職場の中に積極的に取り込んでいます。私が知事になった際には、知事公室長に県立静岡がんセンター疾病管理センター長を務めていた女性を登用しました。女性の知事公室長は静岡県初とのことです。
 彼女は、静岡がんセンターで「よろず相談」を引き受けていました。患者さんから、自分の子どもや家族が入院している人たちまで、すべての相談を受けていた。それは、人柄が良くなければできることではありません。そういう人だと分かっていたので、お願いしたのです。
 県の女性職員たちと食事をする機会も設けました。一緒にご飯を食べながら、「何でも良いから言ってください」と。すると、「知事室が暗い、もっと華やかに」などと言われましてね。それで、今は花や写真を飾ったりするようになりました。時計しか置いていなかった特別会議室にはテーブルクロスをかけたりして、雰囲気が一変しましたよ。部長室などは書類の山でしたが、「これじゃだめだ」と。職員たちにも女性の意見を入れなさい、と言っていますね。
 私自身の小さな試みですけれども、まず隗より始めよということで取り組んでいます。「知事室でもやっているから」と、同じようにする人も少しずつ増えてきていますね。

「さくや姫」は世代間関係により存在感を高めて

 子育てにおいては、先輩がいて後輩がいる。この環境がいちばん良い。同世代でまとまるのもいいけれど、世代間関係を作り上げることもとても大切です。私は、祖父母が身近にいる環境が子どもにとっていちばん良いと思っています。おじいちゃんやおばあちゃんは、経験豊かで小さい子をあやしたり、しつけることができます。それに、孫をかわいがる。無償の愛情をもらった子どもはいずれ、その愛情を他の人に返すことができるのです。私は妻とともに、児童養護施設で暮らす子どもをしばらく預かったことがありますが、子どもにとって愛情とは本当に不可欠なものだと実感しました。
 大事なことは、その無償の愛情を社会化すること。県でも、中学3年生までの通院費負担など、実現に向けたさまざまな支援策に取り組んでいます。そして、地域社会の中で子育て支援の仕組みを確立することです。そうすれば、女性たちも「ワーク」と「ライフ」のバランスがとりやすくなると思います。ですから、若い方に期待することは言うまでもありませんが、子育てが終わって、時間は余裕ができたという方が、結婚や子育ての課題を抱えている方との関係をつくることが望まれます。理解してくれる人が身近にいるということは、とても大きい。「さくや姫」のようなリーダー的存在の方々にも、やがて「さくやおばあちゃん」になられたときには、若い方との世代間関係により、その存在感をより高めていっていただくことが期待されますね。

3776人の「さくや姫」を生むべく裾野を広げる

「さくや姫プロジェクト」では、富士山にちなみ223人を紹介しています。ですが、今後は3776人まで増やしてほしい。木花咲耶姫は富士山頂にある奥宮にいらっしゃるわけですから、3776メートルの頂上を目指していただかないと。これはチャレンジに値するのではないでしょうか。
「753の法則」というものがあります。全体を15と考えたとき、3人が新しいことを始めようすれば、7人は反対、5人は無関心だという。3人は少数派で、反対が圧倒的に多いわけです。しかし、無関心の5人を1人ずつ説得していくと、3足す5で8になり、反対の7より多くなる。しかも勢いがある。それで多数派になるというわけです。
 さくや姫プロジェクトの223人は、まだ少数派です。抵抗や課題も降りかかってくる。プロジェクトをご存じない方や、日々の生活が忙しくてご関心のない方もたくさんいらっしゃる。しかし、その人たちを巻き込んでいけば、変わります。3が8になったときには、空気が変わっているんです。だからこそ、富士山のように裾野を広げてもらいたい。
 とにかく、今は5合目まできています。男女共同参画は、実現まではいかなくても、浸透しています。
 多くの企業で女性が十分に活躍できていないことや、30代の子育て世代の女性の就業率が低いことなどは大きな課題です。しかし、子どもたちから、そのまた子どもたちへと、世代間でつながっていくこと。先輩から学んだことを継承していくこと。そこから変化が生まれるはずです。先輩との関係は宝なのです。
 私は、男女が等しく活躍できる社会が望ましい姿だと思っています。その実現のためにも、「さくや姫」は3から8へ、223人から3776人へと広げ、つなげていくこと。それがとても大事なことなのです。

取材日:2012.1