1000人の足をもんで足の奥深さに感動
足もみを始めたのは、夫の糖尿病をなんとかしたいと思ったのがいちばんのきっかけでした。当時、居酒屋をやりながらお客さんの足をもんでいましたが、足もみの先生に「1000人の足をもむと、足のことがよくわかる」といわれて、「足ノート」を作って人数をチェックすることにしました。この1000人との出会いは私の財産となっています。
いちばん最初に足をもんだのが、明日香ちゃんという重度の小児マヒの女の子でした。お父さんに連れられてきた明日香ちゃんは、歩けない、話せない、笑えない。話しかけながらもんでいったら、目がキラキラとしてきて笑うようになってきました。お父さんはびっくりして「足もみ教えてください」って。それから、毎日お父さんが明日香ちゃんの足をもんだそうです。また、清水のお医者さんが末期の大腸ガンで、足をもみに通っていたのですが、「水野さんのやっていることはリフレクソロジーというんです。アメリカでは医師と同じ地位なのに日本ではそうじゃない。足もみはすごいということを医者に教えてください」といわれました。私のやっている反射療法を、英語ではリフレクソロジーというのだと初めて知ったし、「50歳の私になにができるだろう。医療の知識もないのに」と思いつつ、3カ月で1000人の足をもみました。本当に1人ひとり違います。自分が命を考えられることがとても貴重だと思いました。1000人の足をもんだという重みがありました。繁盛していた居酒屋でしたが閉めて、足もみの会社「タムタム」を起業しました。53歳のときです。
足と心と体はつながっている
足はものすごく大事で、かなめです。不登校児がいて、お母さんが毎夜11時に子どもと会話をしながら足をもむようになったら、昼夜逆転していた体内時計が正常になり、学校へ行くようになりました。障がいのある明日香ちゃんも、お父さんが毎日もんだら少しずつ元気になっていきました。お年寄りもそうです。ケアホームなどに出かけていますが、みなさん元気でニコニコしてくださる。新生児だって、お母さんが足をベビータッチすることでスキンシップしているのです。共通は「足」です。足から体を見ていきます。足を見て腰が悪いことがわかる人、足を見て肩が悪いことがわかる人――整体ではありませんが、ストレッチとか骨を動かすことで治しています。足から体の状態が見えるということをもっと知ってほしいです。そして、足のケアは家族ででも十分できるということも知ってほしいですね。
足もみは、手があればだれでもできます、場所をとりません、道具はいりません。こんなお金のかからない方法はありませんよ。
家族がみんな健康でいるために
明日香ちゃんの経験から、足もみを家族がやれたらいいなと15年間ずっと思っていました。足もみの知識をもった家族が、家族にしてあげられたらどんなにいいでしょう。そのためにはどうしたらいいだろうと考えていたとき、漢字検定を世に広めた殿岡さんと出会い「だれでも手近にできる形の足もみを広めるには、検定がいちばんだよ」といわれ、「足もみ検定」をすることにしました。
今年10月、第1回の検定をしましたが、まだ全国で受験者が100人足らず。もっともっと広がってほしいです。「こういうことをやると、店舗に来る人がいなくなる」という人もいますが、私はそれでもいいと思っています。足もみを、明日香ちゃんのように全国の家庭でやってくれれば、それでいいのです。足もみの店舗で得た利益を、そういうところで使いたいという思いが強いですね。受験した人は「もっと勉強したい」「疲れて帰る夫にやってあげたい」といっています。やってあげる人がいるって、こんな幸せなことってないですよね。
これからは、検定を広めるための仲間を募っていきます。足もみを家庭でやることを教えるインストラクターを、全国で100人くらい作りたいですね。私の使命は、人を豊かに成長させるために、足もみの普及をしたいと思っています。
また、うちの学校リフレクアカデミーで、リハビリなどの介護サービスをやりたいですね。病気にならないためにお年寄りが通ってきてくれる場所でありたいな、と思っています。
15年前に、主婦が2人で始めた仕事です。足をさわりつづけて、足の大切さをかみしめています。
取材日:2010.10