いまだに根強い地域の固定観念
「静岡県地域女性団体連絡協議会」は婦人会がベースになってできた団体です。女性たちがそれぞれの地域で環境問題、青少年育成、子育て、高齢者問題といった多様な観点から活動をしてきました。歴史も古く、昭和24年からの機関紙もあります。活動内容は、その時々の社会情勢や地域のニーズによって変化していますが、今は「次世代に安心をおくろう」を目標に、豊かな地域社会を作るための取り組みに力を入れています。婦人会というと、古くさいと思われがちですが、全然そんなことはなく、昔の機関紙などを読むととても先進的な活動をしていたのです。最近、社会的にコミュニティーの重要性が叫ばれていますが、私たちはそういう問題はとっくに取り上げてきていたのです。
もちろん、男女共同参画社会を作ることも大きな柱の一つです。企業や教育界でも手がけていることですが、地域の中にはまだまだ普及していないと感じますね。例えば、各地で行われる防災訓練。地域の小中学生の参加が増えていますが、中学生に対して「男子は担架の訓練、女子はおにぎり作り」と分けてしまう。男子がおにぎりを作ってもいいし、女子が担架で運ばなければならない場面も出てくるかもしれないのに…。
他にもリーダーシップを発揮して、組織の上の方で活躍する人を「女にしとくのは惜しい」とか、女性自治会長に対し「あの自治会には男はいないのかしら」と言ったりします。
そういうことが巷では何の疑問も持たずに話されているし、聞く方も何の疑問も持たない。まだそういう状態なのです。地域での意識改革は容易ではないのだと思います。
それでも、ずいぶん良くなったとも思います。夫婦で同じ教員なのに、女性教諭だけが育児との両立で大変な思いで仕事をしていた姿を現役時代見てきましたが、きっと、今は夫婦が共に協力していると思います。
育児と介護で知った地域の大切さ
かくいう私も、出産を機に9年間務めた教員をやめました。子育てに専念するつもりでしたが、子育て中に実母の介護をすることになりました。介護制度ができる前でした。比較的元気に過ごしていた夫の母の晩年は、介護制度ができショートステイを利用したし、介護機器も利用しました。実母とも義母とも同居して在宅介護をし、それはそれは大変だったけれど、今の自分にとってはとてもいい経験だったと思っています。なぜなら、それは実践だったから。介護の問題についても、今の介護制度についていろんなマイナス意見もあるけれど、比べてみるとよくなっていることが、自分でやったからわかるのですよ。介護中であっても親子読書の活動もし、毎日忙しく働いていましたが、夫の精神的な支えもあり、充実感こそあれ、犠牲になったとは思わないですね。
地元の婦人会の会長に就任したのがきっかけで現職に就き、それでますます地域の大切さ、ありがたさを知りました。道を歩いていたら知っている人が多いのは楽しいじゃないですか。そういうのができるのがやはり「地域力」。自分が介護や子育てをした経験から、高齢者へのボランティア活動や、地域の学校への支援活動と、さまざまな取り組みをしています。どれも「地域の中で垣根をなくす」ためのこと。それはひいては、私たちの根っこである「地域力」を育てるということなのです。だからこそ、地域の中で、私たちのような地域女性団体が「地縁」を育てていかなくてはならないと強く思います。
「一人ひとりの幸せ」のために垣根を取り払う
男女共同参画は、男女の問題だけれど、それは障害者にも、子供や高齢者にも、垣根を取っ払うための、切り口の一つだと思っています。男女共同参画社会は、ただ女性も男性と同じように働かなければならない、障害者も同じように働かなくてはならない、ということではなく、私の考えとしては「みんなが」その人らしく、持てる力を発揮できる社会づくりという中の一つの切り口。「一人ひとり」が幸せでなければ国の幸せはない、個から広がっていく幸せのため、みんなが参加し考えあっていく社会こそが、真の共同参画社会ではないでしょうか。私が幸せで、その幸せが家族に、地域に、国に、と広がっていく。女性にできて男性にできないことも、もちろんあるかもしれないけれど、例えば教員時代によく、当たり前のように話されていた「女子は高校に入ったら学力が伸びない」というような、根拠のない、後からくっついた社会的概念は、とっぱらいたいですね。
これからの夢?これは今のところ夢の夢なのですが、家を開放して、来たいときに子育て中の人や高齢者の方がサロン的に来られるところができればいいな、と思います。子育て中の人も、一人暮らしのお年寄りも、決して一人きりにならず、触れ合える場。制度のような難しいことじゃなく、そういう思いですき間を埋めることができたら…それが、私にとっての「一人ひとりの幸せ」への発信なのかもしれません。
取材日:2011.1