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とびっきりの元気と好奇心と行動力で世界を体験し、
世界の真実を伝えるエコロジスト。

松野下琴美(まつのした・ことみ)

松野下琴美(まつのした・ことみ)



環境活動家
環境NGO CordilleraGreenNetwork 日本支部長
世界未来予想図プロジェクト静岡支部長
somaプロジェクト 環境教育ファシリテーター


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未来予想図プロジェクト
松野下琴美(koto1119)on twitter
soma project

フィリピンとヨーロッパ、2つの現実に衝撃

 静岡県立大学では国際関係学部で、文化社会人類学とタガログ語を専攻していました。なぜタガログ語を勉強して、フィリピンに関わるようになったかというのは、自分でもよくわからないのですけれど、「自分はフィリピンで行く」という直感みたいなのはありましたね。高校生のときから、何となくそう思っていたんです。
 私は推薦入学だったのですが、選考のときの小論文もフィリピンがテーマでした。当時、フィリピンのアロヨ大統領と小泉首相がFTA(自由貿易協定)を結んで、フィリピンから看護師や介護士がたくさん来るというニュースで話題になっていました。そうなると静岡はどうなるのか、「FTAによる静岡の影響」というタイトルで、推薦入学のための小論文を書きました。
 初めてフィリピンに行ったのは大学1年のとき、短期間のホームステイです。都市部では、物乞いの子供たちやおばあさん、ゴミを集めて生活をする人々がたくさんいました。豊かな自然のある村では、人々が川に入ってビニールのパックシャンプーで体を洗っていて、使い終わったビニールのゴミがそこらじゅうに散らばっていたり、泡だらけの水がそのまま海に流れていたり……。そういう光景に驚きました。
 フィリピンから帰国して間もなく、今度はドイツとフランスに行きました。エコロジストの松本英揮さんが主宰するエコツアーに参加したんです。路面電車を活用して市街地にクルマを入れない取り組みや、人にも自然にもやさしい緑豊かなエコタウン、ゴミや木くずのペレットを使った地域発電、食料品がはかり売りでビニール袋を使わないエコスーパーなど、それはそれでとても素晴らしかったのですが、そういう環境先進国の姿そのものより、フィリピンとのギャップに愕然としてしまった。この差は一体何なのだろうかって思いました。

自分の目で見た「世界」を自分の方法で伝えたい

 2つの「現実」を前に考えました。私は何ができるのだろう、この世界をどう生きていけばいいのだろうかと。私は日本で日本人としてどう生き、何を話し、何をすればいいのか。考えたけど、正直よくわからなかった。わからないので、じゃあいろんな人に話を聞いてみようと。それで、松本英揮さんを呼んで話を聞けないかなと思って「講演会っていうのはどうやればいいんですか」ということを、あちこちに聞き回った。
 集客しなきゃいけないことがわかったので、自分がなぜ松本さんを呼びたいか、その理由をフィリピン、ドイツ、フランスで見てきた写真を使って紙芝居にしたんです。その紙芝居をもって静岡市周辺の市民団体や学校を回り「12月にこういう人が来るので来てくださいね」と宣伝して、結果的に松本さんの講演会には300人が集まりました。
 イベントって面白い!って思いました。それで大学2年のとき、イベントを企画運営するサークルを立ち上げました。松本英揮さんの講演会はその後、毎年12月の定例になってまして、今年で6年目になります。後輩たちが引き継いでくれているんです。
 松本さんは、世界100カ国以上を自転車で回ったすごい人で、宮崎に住んでいて鹿児島大学の非常勤講師もやっていらっしゃる。宮崎から鹿児島大学まで、自転車で往復16時間かけて通ってしまう鉄人です。NPO法人H-imagine(ひまじん)の代表で、自然エネルギーのプロモーションとか子供の環境教育、講演活動をされています。
 松本さんが世界各地で撮られた写真を見て、「世界ではこんなことが起こっているんだ」と衝撃を受けました。北朝鮮やキューバの写真もありました。彼の写真や話は、すべて[真実]なわけです。「私も自分の目で見たい」と思いました。そして自分が見たこと、何を大切にしたいと思ったかを、いろんな人に自分の言葉、自分の方法で伝えたいと思ったんです。それが、フィリピンの後にヨーロッパへ行った後の自問自答、「自分は日本人として何をすべきか」に対する1つの答えです。

環境教育の「実践」の場を求めて1年間休学

 大学3年のとき1年間休学して、フィリピンで生活しました。フィリピンへは毎年行っていたのですが、やはり1度はどうしても暮らしてみたかった。周囲の友達はアメリカに語学留学、ニュージーランドにワーキングホリデー、私はなぜかフィリピンの山の中(笑)。静岡県立大学は本当にいい大学で、休学しても学費が無料なんですよ。
 ちょっと話は飛びますけど、フィリピンの森林面積は現在、全面積のわずか18%なんです。それは日本の企業、つまり私たち日本の消費者が、建築をはじめいろんなところにフィリピンの安い木材を使っているからなんですね。おかげさまでフィリピンの山々は、見事にハゲ山状態です。 加えてフィリピンでは、伝統的に焼畑農業をやっています。昔は20~30年というサイクルで焼いていたので、それほどダメージはなかったのですが、最近は人口増加と山岳地帯の市場経済化が進んだために、まちで野菜を売り現金収入を得ている人たちが山に入り、2~3年ごとにどんどん畑を焼いてしまう。それで木が生えなくなってしまったわけです。さらに山火事の問題もあります。フィリピンには雨季がありますから、雨が多い季節になると、そうしたハゲ山では土砂崩れや土砂災害が頻発します。私も1度、村に着いてホッとひと息ついていたら、ドンというすごい音がして戻ってみたら、ついさっき自分が通ってきた道が土砂崩れで埋まっていたんです。そのときは幸いに死者は出ませんでしたが、2009年の台風ペペンによる被害でも土砂崩れや洪水が多発し、フィリピン全体で500人の死者が出ました。
 対策としては、地道な植林活動とともに、山に住む住民たちの意識を変えなきゃいけない。環境教育がすごく重要なんですね。そういうことは、これまで本で読んで知っていましたが、私には全く実践がなかった。それでフィリピンに行ってしまえ!と、休学して1年間住むことにしたんです。私が暮らしていた村は電気もなくて、水力発電を作っていました。あとは家畜がものすごく多いので、豚や牛の糞を集めてバイオガスを作ったり。だいたい大きい白豚3頭分で5人家族の電気がまかなえます。

環境教育と交流と若者育成のためのイベント


 フィリピンでは、現地を拠点にしているNGO「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク」(CGN)のインターンとして、いろいろな経験をさせていただきました。コーディリエラはフィリピンのルソン島北部にある1,500m級の山々が連なる山岳地帯で、山間部には先住民族が暮らしています。CGNは、山岳地帯の豊かな自然と先住民の生活を守る活動をしていまして、反町眞理子さんという日本人女性が代表を務めています。
 私は大学のゼミの先生をつうじて、偶然CGNを知りました。面白そうな活動だと思ってメールしてみたんです。そしたら何と反町さんは静岡の方だったんですね! 「もうすぐ帰国するから会いましょう」と、忘れもしない大学3年の12月に初めてお会いしました。それがご縁で、CGNのインターンとしてお世話になったんです。
 CGNの活動で特徴的なのは、演劇と写真と絵を通じた環境意識啓発を特長にしている点です。反町さんはフィリピンに移住されるまで、東京で出版や芸能関係の仕事をしていたんだそうです。
 CGNが主催するイベントに「コーディリエラ・ユース・エコ・サミット」というのがあります。コーディリエラ地方には6州あるのですが、差別問題や部族間の争いがあるために、子供たちが6州全体で交流するチャンスがない。そこで反町さんは、演劇やダンス、音楽をとおしたイベント「コーディリエラ・ユース・エコ・サミット」を企画したんです。現地に住む日本人という第三者的な立場を活かして、交流を実現させたんですね。私も現地にいる間、サミットのお手伝いをしました。
 本当にびっくりしたのですが、フィリピンの国民性なのでしょうか、どの子供も素人とは思えないくらい歌や踊りや演技がものすごくうまい。中学生を対象に「あなたたちの村の環境問題ってなんですか」というテーマを与えて、ファシリテーターを中心に彼らに演劇を作ってもらい、それをサミットで披露するんです。民族ごとに違う模様のふんどしをつけて踊ったり、村ごとに違うにリズムだったり……言葉も文化も違う子供たちが集まって、それぞれが自分たちの環境問題を表現する。イベントは環境啓発活動であり、若者の育成であり、他民族間の交流であるわけです。そういう反町さんのユニークな発想や手法は素晴らしいと思います。

山岳地帯の子供が描いた絵で自立をサポート

 インターンの期間中は、環境教育全般を任されました。「コーディリエラ・ユース・エコ・サミット」のほか、6州全部を回って子供たちに環境教育セミナーをしたり、それと並行して「未来予想図プロジェクト」のための絵を描いてもらいました。
「未来予想図プロジェクト」は、中越沖地震後の2007年、絵画療法で子供たちの心を軽くする目的で始まりました。プロジェクトを世界に展開しようということになり、その第1回目がフィリピンになったんです。タイ、ネパール、アフリカと続く予定です。子供たちが描いた未来の絵を日本にもってきて展覧会を開き、入場料や募金を集めて、最終的にはそのお金で絵を描いた子供たちに必要なものを買ってもらう。
 子供たちの未来図には、思った以上にコーディリエラらしい風景が描かれていました。棚田があったり、川があったり、豊かな山岳地帯の自然が多かった。都会に憧れていると思いきや、子供たちは意外にも故郷の風景を大切に感じているのだなと思いました。全部で2,000枚くらいの絵が集まって、子供たちが添えたコメントを日本語に翻訳して新潟に送りました。
 子供たちは集まったお金で、クッキーを焼く機械が欲しいのだそうです。自分たちでクッキーを焼いて、販売したいと。彼らが自立しようとするのをサポートしていくのが、私たちの役割ですね。帰国後はフィリピンで描いてもらった絵を使って、日本の子供たちにワークショップを開きました。

フィリピンでの経験を静岡の森に活かしたい

 昨年、静岡市が主催した「地域シゴトの学校」に参加しました。ソーシャル・アントレプレナー(社会起業家)育成のための講座だったのですが、そこで同じチームになった人たちで立ち上げたのが「somaプロジェクト」です。
 実は静岡市は、全面積の70%が森林なのですが、うち44%が人工林なんです。間伐が全くされていないために下草が生えない荒れた土地も多くて、林業家の人たちはそれを「緑の砂漠」と呼んでいます。なかには所有者がはっきりしない森も結構あるそうです。
 実際に「緑の砂漠」と呼ばれるエリアに行ってみたんです。地盤が弱くて、これじゃ大雨が降ったり、地震がきたら一発でドサッと行ってしまいそうだよなと思いました。実は静岡にそんな危険なエリアがあるということを、まず地元の人たちに知ってもらわないといけないですよね。
 もう1つ、フィリピンにあるたくさんのハゲ山は、日本の責任でもあります。じゃあ自分に何ができるか考えてみたとき、もし日本でもっと木材の地産地消が進めば、少なくともフィリピンの森は少しずつよみがえっていくんじゃないかと。そのためにはまず、死んでしまった森を生きた森に戻していかないといけない。消費者の意識を変えることも必要ですよね。
 まず、地元のそういう実情を知ってもらおうということで、1つのツールとして「ひのまろ」「すぎまろ」というキャラクターをつくりました。森林認証マーク(SGEC)がついたヒノキとスギでできています。SGECマークがついているということは、ちゃんと整備された山で切られた木――つまり動物が棲めるような水もエサもある健康な山の木ということですね。「ひのまろ」「すぎまろ」を普及させることで、地元の木の大切さを触って感じてもらいたいし、「緑の砂漠」という現状を知ってもらいたい。
 フィリピン関連の環境活動はこれからも続けていくつもりですが、フィリピンでの環境教育の経験を、今後は日本でも活かしていきたいと思っています。日本でも実践を積んでいきたいなと思います。

取材日:2010.9



静岡県焼津市生まれ 焼津市在住


【 略 歴 】

2005 静岡県立大学国際関係学部入学
フィリピンでのホームステイを経験した後、ドイツおよびフランスのエコツアーに参加
2008 1年間休学し、フィリピンを拠点とするNPO団体
「コーディリエラ・グリーン・ネットワーク」(CGN)の活動にインターンシップとして参加
2009~  世界未来予想図プロジェクト 静岡支部長
2010 静岡県立大学国際関係学部を卒業(専攻:文化社会人類学、フィリピン語) 「somaプロジェクト」開始

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