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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

天城の自然を遊び場にした「プレーパーク」や、
「語り」の活動を通じ、人との出会いが広がる。

田所雅子(たどころ・まさこ)

田所雅子(たどころ・まさこ)



NPO法人天城こどもネットワーク代表


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語り手・自然案内人|田所雅子
天城こどもネットワーク|こどもの瞳かがやく街に!

子どもどうしで育ち合う場を提供する

 自然と子どもが大好きです。狩野川のきれいな流れをみたとき、夏は泳げそう、川のそばで子どもを遊ばせたいなあと思い、上流の天城湯ヶ島に移ってきました。

 私が自然案内人と称しているのは、私が惚れた自然、惚れた場所をご案内したいと思ったからです。最初は、地元のかたに案内してもらって山や川に入っていましたが、そのうち、自然観察の勉強をしながら学びました。案内するだけではなく、楽しんで自然を味わうところまでできないか、山の遊びを知らない子どもたちに面白さを伝えるにはどうしたらいいかと考え、ネイチャーゲームインストラクターや自然観察指導員やこども環境アドバイザーなどの資格を取りました。

「NPO法人天城こどもネットワーク」は、子どもが育ち合う場を作る会なので、会員は大人。子どもたちは、「プレーパーク」という廃材置き場のような冒険ができる場所で、ボランティアの大人が作った穴や小山や木に張ったターザンロープなどで、自分がやりたいと思った遊びをします。大人から仕掛ける「森の体験活動」というイベントもあります。

 かつては異年齢集団があって、大人の目のないところで子ども同士遊んで育ったものです。いま、そういう場がなくなってしまい、子どもたちが育つ場がありません。昔のように「育ち合う場」をなんとか作ろうということで、いろいろな仕掛けをしています。私自身、自然や木が大好きだったので、仕掛けの深みにはまっていきましたね。

 子どもが遊ぶことはとても大事です。大人になっての仕事への意欲とか工夫とかいろいろなことに頭を使うことも含めて、全部遊びからスタートしているのではないかと思います。子ども同士で遊び工夫することが、いろいろなことにつながっていきます。ノーベル賞を受賞された方が、「子どものころはよく遊びました」と、おっしゃていますよね。体の中に、遊びによってできた宝物をいっぱいつめこんで、それが、大人になってからの大きな仕事に繋がっていくのではないでしょうか。

「プレーパーク」は18年続いていますので、赤ん坊から育ってきた子を見てきています。同い年の子と比べて、友だちとの繋がり方が違いますよ。いまでも友だち同士で助け合うし、絆が深いです。一緒に育ちあってきたということでしょうね。

語る大切さ、素晴らしさに気づいてプロの「語り手」に

 千葉で、地域に文庫を作り、子どもたちに「お話」を語っていました。こちらにきたら、図書館がなくて「これは大変だ」と、子どもの本800冊を集めて自宅を文庫にし、「お話」も語り始めました。昔から子どもたちは炉辺で昔話を聞いて育ってきました。それは、子どもの成長にとってとても大事なことなのに、ほとんど失われてしまっていること気づき、もっと広めなければと考えていたとき、いい出会いがありプロになろうと修業を始めました。

 いろいろな形で「語り」を行っていますが、すべて人との出会いで広がりました。認知症の方々を元気にしたいと「語り」を始めたら、その効果にびっくり。言葉を失くした人から言葉を引き出すことができました。大仁の特別養護老人ホームで7~8人の認知症の方々に「語り」をお届けしているのですが、言葉を失った人が「ありがとう」「またきてくださいね」と、本当に言葉を絞り出すような声でいってくださった。すごく感激しました。また、アルツハイマーの母が骨折して入院したとき、症状がどんどん進行して、笑顔と言葉を失ってしまいました。退院して施設にいた3カ月、毎日通い、母の手を取って物語を語りました。それで、母は言葉を取りもどしました。物語を聴くことは、その人の体の中にある言葉を、引き出すことにつながるようなのです。「語り」の力はすごい。

 楽器を使った「語り」もしています。鉄で作られた創作楽器「波紋音」(はもん)という打楽器を奏でます。作家は水琴窟の水の響きを楽器にしたかったそうです。その音を聴いて異世界へ誘ったり、「語り」の途中に音を入れたりしますが、不思議に心地いい音で、「語り」によくあいます。

伊豆の埋もれた民話に光をあてる

 昨年、伊豆の88カ所のお寺を巡りました。「ラジオ 伊豆八十八ケ所巡礼」という伊豆の霊場を案内する番組の語りのため、お寺にまつわる話を探していたのですが、資料やたくさんの民話を見つけました。伊豆にはもう語り部がほとんどいらっしゃらないですね。資料だけになって埋もれてしまっています。その埋もれた民話を引っ張り出して、いまFMラジオで語っています。それを本にまとめるのもいいですが、声に出して語る形で残していきたいと思っています。

 88カ所で宝物を拾ってきたのです。これは財産です。かつて、伊豆半島ではどのような暮らしをしていたかがわかるし、どれだけ自然が深くて天城山を越えるのが大変だったかも、物語に出てきます。民話を生きたものにして伝えていきたいですね。

 そして、子どもたちが思いっ切り遊べる場、大型児童館(チルドレンズミュージアム)を作りたいと思っています。ここにくれば自由に遊ぶことができる、その遊びの中から学べる、という場作りです。大きい建物をドーンと1つ作って、「子育ち」支援を伊豆中に発信したいです。手とり足とりで子どもを育てるのではなく、子どもたち同士で育ち合う場を作る、育ち合える仕掛けをいろいろするということですね。

 そのような建物を作りたい、ではなく、作るぞ!

取材日:2010.11



秋田県生まれ 静岡県伊豆市在住


【 略 歴 】

           
1992 伊豆市の天城湯ヶ島に移り住む
1993 り自宅に家庭文庫を開設
子育てサークル「遊ぼう会」を開始
1998 天城プレーパークの会設立
2003 プロの語り手として仕事を開始
第1回子ども読書推進賞受賞
2006 こども環境学会活動奨励賞受賞
2008 創作楽器「波紋音」と出合う
こども環境アドバイザー認定
国際ソロプチミスト天城地域ボランティア賞受賞
2009 静岡県子ども未来大賞特別賞受賞

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