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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

行政や学校との連携、家族向け行事の企画を通じ、
コミュニティ主導で男女共同参画を推進。

沼津市第五地区コミュニティ推進委員会

沼津市第五地区コミュニティ推進委員会


沼津市第五地区コミュニティ推進委員会 副会長
第五地区センター センター長

芹澤保次(せりざわ・やすじ)


- WEBサイト -

沼津市第五地区センター

市の「男女共同参画推進モデル地区」として活動

 沼津市第五地区コミュニティ推進委員会は、沼津市立第五中学校区にある4つの連合自治会が運営する自治会組織です。地域に暮らす人々の安全を守り、1人ひとりの生活がより豊かなものになるよう、主体的に活動を続けています。
 沼津市には18のコミュニティがありますが、第五地区は1万世帯、約3万人の人口をかかえる市内最大のコミュニティです。エリアの面積も広く、沼津駅前の商業地域から駅北の文教地区、郊外の農業・工業地域と、地区ごとにさまざまなエリア特性をもつのも特徴です。このエリアの広さ、異なる地域性により、かつては各地区で独自の活動を行うことが多かったのですが、2008年の地区センター設置に伴い、現在では合同で取り組む事業も増えています。
 男女共同参画の推進活動もその1つです。2009年に沼津市の「男女共同参画推進モデル地区」事業における初のモデル地区となったのをきっかけに、2年間、さまざまな活動をしてきました。2010年にはコミュニティで、県男女共同参画社会づくり宣言団体として取組宣言を行っています。市の第五地区での事業は今年3月に終了しましたが、コミュニティ独自に「第五地区男女共同事業推進委員会」を立ち上げ、現在も推進活動を継続しています。
 地域には、老若男女を問わず、さまざまな考え方をもつ人々が暮らしています。すべての人が同じ方向を向くように導いていくことは、並大抵の努力で成し得ることではありません。メンバーそれぞれが真剣に活動に取り組んでも、なかなか浸透していかないというのが現状です。しかし、これまで活動を続けてきて、地域主導で男女共同参画を推進していくことは、とても重要なことだと知りました。ですから、たとえ少しずつでもいい。1人ずつでもいい。長い時間をかけて活動を続けていきたい。この第五地区で成功事例をつくり、後に続く自治会等の団体への道筋の一考となればと思っています。

自治会活動における男女共同参画の必要性

 市のモデル地区に指定され、まずは推進委員会の髙木孝会長を中心に、地域内の自治会長の間で勉強会を立ち上げました。さらに、市や社会福祉協議会の担当者のほか、小学校、中学校、高校、特別支援学校や地域にある企業にも参加していただき、職域を超えた専門委員会も発足しました。というのも、地域で男女共同参画を推進していくには、行政や教育機関、地元企業などの理解と協力が欠かせないからです。メンバーは19人で、半数以上が女性です。静岡県立大学教授の犬塚協太先生に指導をお願いし、10回以上にわたる会議で議論を繰り返しました。そのなかで、男女共同参画とはどういうものなのか、その必要性やメリット、具体的な事例などについて学ぶことができ、意識づけもできていったように思います。
 当初は、「男女共同参画」という言葉は知っていても、具体的にどんな行動や態度を指すのかはよくわからないという人がほとんどでしたね。しかし、話を聞いてみると意外に「それなら普段からやっている」という反応が多かったように思います。たとえば、手の空いているときに洗濯物を取り込むだけでも、男女共同参画になるんです。「それなら自分にもできるのではないか」というのが、私自身の最初の印象でした。
 第五地区においては、性別や年齢の差を超えて参加できる行事や活動はこれまでにもいくつかありました。しかし、現役を退いた世代を中心とした行事が主なものでしたし、自治会役員は男性中心です。少子高齢化がすすむなかで、若い世代や女性の自治会への参加はずっと課題としていました。私たちメンバーは、勉強を続けていくうちに、より多くの住民の地域活動への参加、後継者育成という観点からも、自治会運営に男女共同参画の視点を取り入れることが必要なのだと考えるようになりました。

行事を通じて地域の人々に男女共同参画を促す

 初年度は、会議を通じてメンバーそれぞれの意識向上に努めましたが、2年目からは実践的な活動をしようということで、まずは料理教室を企画しました。第五地区では「子どもの居場所づくり」として毎年、将棋教室、クリスマスケーキ作り、物づくりやもちつき大会を行っています。手始めとして、クリスマスケーキ作りを行う際に、お父さんたちの参加も呼びかけたんです。料理講師の先生も男性にお願いし、回覧などを通じて募集したところ、予想を上回る20組ほどの親子が集まりました。例年、子どもたちとお母さん中心だったところへお父さんが加わることで、ずいぶんとにぎやかになりましたね。若い世代のお父さんたちが多かったのですが、楽しんでもらえたようです。
 男女共同参画の推進をめざして新たに始めた取り組みとしては、家族で楽しむ手作り教室があります。大人と子どもがコミュニケーションしながらできるものがいいだろうということで、ペーパークラフト作りを行いました。参加者には双子のお子さんを連れたお父さんや、おばあさんとお孫さんなどもおり、こちらも盛況でしたね。最後に皆で合唱し、楽しいひとときを過ごすことができました。
 このような催しを行う目的は、男性でも女性でもまずは参加してもらい、地域活動について知ってもらうこと。そして、家族や周囲の人たちとの絆を深めてもらうことにあります。参加してもらえば、たとえば子どもに連れられてきたお父さんでも、作業を通じて子どもと触れ合う時間をもつことができます。その間にお母さんは息抜きをすることもできますよね。地域活動を通じて、父親の育児参加を促せることは大きなメリットだと思います。
 また、男性に地域活動に参加してもらうのは、自治会にとっても意義あることです。子育て世代のお父さんは普段は仕事で忙しく、自治会活動というと敬遠されることも多々ありますから。しかし、参加してみたら意外と楽しかったということもあると思うんです。子どもをきっかけに地域の人たちと親睦を深めれば、そこから新たな流れも生まれるかもしれません。退職後の人たちばかりでなく、現役世代にも自治会運営に関わってもらうのが理想ですから、このような取り組みを続けていくことは非常に重要だと思います。

地域ぐるみの子育てにより支え合うコミュニティに

 第五地区で毎年行っている行事に「コミュニティ文化祭」があります。地域の学校に呼びかけて生徒の絵や書道の作品を展示したり、地域でものづくりをされている方々の発表の場にもなっています。昨年は男女共同参画のブースを設け、PR資料を配布したり、訪れた小中学生から地域のお年寄りまで、幅広い年代の方々への啓発を行いました。文化祭は男女、年代を問わず地域の方々が集まるイベントですから、男女共同参画への理解を促す機会として今後も活用していきたいと思っています。
 また、毎年恒例となっている「通学合宿」も、男女共同参画を推進する上で意義のある事業です。通学合宿とは、第五中校区にある2つの小学校の4~6年生を対象に、地区センターで2泊3日の合宿を行うというもの。定員は60名ほどで、2日目には地区センターから登下校します。家庭を離れた環境で、子どもたちがお互いに協力して生活能力を習得することを目的としており、自治会の有志が子どもたちの指導にあたります。
 私も毎年関わっていますが、子どもたちはとても喜んでいますね。一緒に食事の支度をしたり、お風呂に入ったりと生活を共にすることで自然と仲良くなるようです。体育館でスポーツをしたり、砂絵を作ったりもするのですが、上級生が下級生の面倒をみる光景もみられます。学校も学年も違う子どもたちが交流できる、貴重な機会なのではないでしょうか。
 一方で、集団のルールを守らない子どもがいれば、厳しく叱ります。ときには怒鳴ることもあります。今では地域の父兄が子どもたちを叱る機会はほとんどなくなりましたが、通学合宿では「地域で子どもを育てる」環境を大切にしているんです。そして、そこから子どもたちやその親と地域の人々が親しみ、支え合う地域づくりを目標としています。
 通学合宿を経験すると、たとえば家でも手伝いをするようになったりと、子どもにその後、何らかの変化があることが多いようです。保護者からも、来年もぜひ参加させたいという声をいただきます。第五地区において、通学合宿は地域でできる子育て支援のひとつのあり方として定着しつつあると思いますね。

行政、学校などと連携し機会を作り出すことが重要

 自治会で運営しているコミュニティ文化祭も通学合宿も、地域の学校と連携することで成り立つ事業です。第五地区には、小中学校だけでなく高校や各種学校も多数あることから、私たちはそれらの学校との関係構築に重点を置いてきました。校外教育の場としての地域の役割を果たすため、先生方と情報交換をしたり、気軽に声を掛け合えるよう努力し、信頼関係を築いてきたんです。
 第五地区では自主防災活動に力を入れており、災害発生時の避難所として6つの学校が指定されています。学校側とは、無料で部屋を開放してもらう契約を結んでおり、どの部屋を使用するかというところまで話ができています。また、自主防災訓練の際には中学生に参加を呼び掛け、避難訓練、非常食の炊き出し訓練、三角巾や簡易担架を使った救護訓練などを行いました。
 加えて、行政との情報交換も綿密に行っています。地域の要望や声に対してすぐに相談できるよう、日常的に会話できる雰囲気づくりに努めていますね。逆に、行政からの要請があればいつでも協力できるような態勢も整えています。自治会は地域にもっとも密着した組織ですから、行政の方針について地域住民に広める際などにはお役に立つことができていると思います。
 私たちは毎年、行政や学校関係者との情報交換会を行っています。関係者同士の面識を得ることで、いざというときにも助け合い、お互いの課題解決に結びつけていくことを目的としています。男女共同参画を推進する上でも、皆さんと連携しながらさまざまな機会をつくり、地域の人々に広めていくことが大切だと考えています。それが、安心安全でより豊かな地域づくりのための一歩となるのではないでしょうか。

男女共同参画が定着するよう今後も目配りを

 私自身にとっては、男女共同参画の発想は自然に受け入れられるものです。たとえば夫婦であっても、それぞれ独立したひとりの人間であると私は考えます。男女という枠組みにとらわれず、お互いが何者にも縛られない自由をもつべきです。一緒にいたいときもあれば、1人でいたいときもある。友達と旅行にいきたいこともあるでしょう。そういうとき、お互いがいつでも自由に行動できるような家庭でなければつまらないと思うんです。そのためには、家事や育児を分担することも必要です。
 しかし一方で、自治会に男女共同参画を浸透させるのは難しいですね。現在、沼津市には296の自治会があります。女性の自治会長はその年にもよりますが、数人程度。第五地区でも年によって、1人選ばれるかどうかというところです。地域のリーダー的な女性に声を掛けるなどの努力はしていますが、今後の大きな課題です。後継者育成も引き続き、重点的な取り組みが必要です。次世代を担う若い世代の人たちに対する働きかけを継続的に行っていかなければならないと考えています。
 今年で男女共同参画の活動は3年目になりますが、地域住民の間では、少しずつながら、変化が起きつつあるのは感じます。次回のイベントを期待する声も増えています。しかし、ここで推進活動をやめたら、流れは止まってしまうでしょう。そうさせないためには、私たちがまだ目配りをする必要があります。とにかく継続していくこと。現時点ではそれが大事なことです。
 私は退職と同時に自治会長に就任し、それから13年間自治会活動を続けてきました。しかし、現役時代は地域活動に関わる時間がとれない1人だったんです。実際に活動に参加してみて、今ではその必要性を実感し、機会をいただいたことに感謝しています。今私たちができるのは、自治会活動を通じて第五地区を良くしていくこと。そしてそこから、近隣地区、沼津市、静岡県全体へと活動の輪が広がっていけばいいと思っています。そのためには、男女共同参画も上辺だけのものでなく、人々がより良く生きるための力となるようなものにしたい。もっと努力し、もっと徹底的に取り組んでいかなければならないと思っています。

取材日:2011.9




【 沿 革 】

2008沼津市第五地区センター 開館
2009沼津市男女共同参画推進モデル地区(~2011)
2010男女共同参画社会づくり宣言団体 登録
2011新規事業として「手作り教室」開催
第五地区男女共同事業推進委員会 設立

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