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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

「お客様応援隊長」による男女共同参画推進を柱に
会計、財務にとどまらない経営サポートを顧客に提供。

有限会社知久会計センター

有限会社知久会計センター


お客様応援隊長

山本正己(やまもと・まさき)


- WEBサイト -

有限会社知久会計センター 知久正博税理士事務所

新たなサービス展開のため、異業種から人材を登用

 当所は、1984年に所長の知久正博が個人事業として開業した会計事務所です。1991年に法人化し、現在、所員は13名、うち6名が女性です。
 お客様に元気になって頂き、「選ばれる会社」になろう。それが当所のモットーです。そのために、会計事務所の枠組みにとらわれないサービスの提供を心がけ、所員一丸となって取り組んでいます。例えば、1986年から続く経営者による経営研究会や、若手経営者、経営後継者を対象に経営の基本やノウハウを伝える「新社長大学」の企画もそのひとつです。新社長大学は、地域のお客様が後継者育成の悩みを持っておられることを知り、それに応える形で開校しました。今年で7年目を迎えますが、参加者に生き生きと楽しみながら学んで頂いています。
 所長は、従来の会計業務や決算申告の業務にとどまらず、他の会計事務所にない付加価値をお客様に提供したい。そんな思いを開業当初より強く持っており、その「付加価値」の部分に特化したサービスを提供するために、他の所員とは異なる経歴を持つ人材を探していました。白羽の矢が立ったのが私で、当所での肩書きは「お客様応援隊長」というものです。
 私は昨年、静岡県商工会連合会を含め、計36年間勤務した商工会を定年退職し、当社に入所しました。県商工会連合会時代は、企業支援策として主に事業転換や創業、経営革新、販路開拓、むらおこしなどを手掛けました。会計、税務業務については、商工会、県連合会の経営指導員時に経験しましたが、当所では担当しておりません。
 現在の業務は、経営にかかわる各種相談はもちろん、ハローワークなど各種機関の公的制度の活用支援、パブリシティ支援から、「ちきゅう駆け込み寺」として、お客様のお困りごとの相談にも応じています。他の所員と私が連携してお客様のお悩みを解決していくことで、「かゆいところに手が届く」サービスを提供できればと考えています。

女性も男性も同じ条件の下でキャリアを積める社風

 私の取り組みの中で、現在、特に力を入れているのが、県男女共同参画課による「男女共同参画社会づくり宣言」の推進です。お客様に宣言を行って頂くことで男女共同参画に対する意識を高めて頂き、より働きやすい職場環境をつくっていただこうというものです。宣言を行って登録された「宣言事業所」を対象に行われる、セミナーや講義を活用するためのサポートも行っています。
 私は、男女共同参画の視点に立ち、ワーク・ライフ・バランスや女性の参画拡大を実現することで、社内での意思統一が図れ、事業運営も円滑に進むと考えています。「男女共同参画」と言っても、男女だけでなく、例えば、ベテランと新人、障がい者と健常者、外国人と日本人というような属性や立場の違いでも同様です。そんな思いから、さまざまなお客様や地域の企業をご訪問し、お話をさせて頂いているんです。
 当所では、私が入所した昨年7月に宣言をしました。内容としては、3つの理念――「良い会社、良い経営者づくりのための所員の資質向上」「お客様に満足していただける仕事をするための明るい職場づくり」「ワーク・ライフ・バランスの実践による仕事と家庭の両立」を掲げています。課題ももちろんありますが、当所ではほぼ実現できているのではないかと思いますね。
 所員13名のうち、既婚者は10名います。女性のうち2名が子育て中で、うち1名は子供が3歳未満のため、現在は午前中のみの時短勤務を行っています。
 当所では、特に定められた制度があるわけではありません。しかし、所員から働き方についての要望があれば、事情を確認した上で、なるべく受け入れるように努めています。
 以前は、女性所員は結婚、出産を機に退職していたのですが、現在子育てをしているもうひとりの所員が、産後の継続勤務を希望し、はじめて産休後に復帰しました。今から12、3年程前のことです。現在では、女性が結婚、出産しても職場復帰をするのは当然という空気が所内にはありますね。そして、女性も男性と同じ条件の下、キャリアを積んでいます。

女性のスキルアップが若手を育てる好循環を生む


 会社側としても、誰か1人の退職に伴って他の人を採用するより、時短勤務を経たとしても、復帰してもらったほうがメリットは大きいと考えています。時短勤務の期間中、一時的に担当業務を他の所員がカバーすることになるとしても、最終的には、もともと長く担当していた所員が業務を継続するほうが、お客様に安心を与えることができると思います。私たちにとっても、そのほうが仕事をよりスムーズに進めることができると思いますね。
 当所では、一人ひとりが担当している業務量は決して少なくないのですが、それぞれが余裕を持って業務に当たっています。というのも、多くの所員が勤続10年を超えており、十分な経験と知識を備えているからです。入所して驚いたのですが、どの所員も非常に能力が高く、バランス感覚に優れていると思います。効率良く楽しみながら仕事をしていると感じますね。
 個人の能力の高さゆえに、1人が抜けても、他のスタッフでフォローできることが当所の強みです。また、そこから生まれるゆとりが、ワーク・ライフ・バランスや、仕事を楽しむことにも繋がっていると思います。
 結婚、出産を経て復帰できる態勢を整え、女性所員もより長く当所で働いてもらうこと。そして、それによって彼女たちにスキルを磨いてもらうこと。それが他の所員をフォローする態勢に繋がり、より若い所員も長く働いていける環境を生み出す。個人の意識も高まり、責任感が身に付く。当所では、そんな循環ができているのではないかと思っています。

ワーク・ライフ・バランスが顧客の課題解決に貢献

 入所以来、1年間で男女共同参画社会づくりの宣言をしていただいたお客様は18社になります。最初にお話をさせて頂いた際には、宣言事業所の制度について、ほとんどのお客様がご存じなかったですね。しかし、会社経営者にとって不安が続く社会状況の中で、社員が力を合わせ困難を乗り切っていくことが重要である旨をお話しますと、理解を示していただける場合がほとんどです。当所の取り組みについても例として挙げ、ご納得いただいていると思いますね。
 そのうちの1社である有限会社スズキ工業様は、44名の社員のうち、40名が女性という会社です。大手メーカーの協力工場であり、自動車電装部品の製造や検査業務を主として行っていらっしゃいます。業務の性格上、社員の方々に求められるのは正確性です。検査業務にはミスが許されませんから、より正確に業務を行うことができる環境を整えることは重要な課題です。
 私がお話をさせて頂いているチーフマネージャーの鈴木貴美子様は、自社の課題解決の手段のひとつとして、宣言事業所登録をして下さいました。男女共同参画を推進することで、社員の方々のモチベーションを向上させ、「会社に来て、元気になって帰ってもらいたい」と、社員教育やより良い職場づくりに熱心に取り組まれています。
 私も、微力ながら、そのお手伝いをさせて頂いています。その1つが、全社員の方を対象にしたセミナーで、森町の「夢街道匠塾」主宰の田邊哲さんをお招きした講演などを行いました。田邊さんには、一人ひとりが自分の人生という会社の社長であり、社長として自らの人生に責任を持つことの必要性についてお話して頂きました。
 また、社内での教育訓練も行わせて頂いています。中小企業を取り巻く環境変化や、業務改善のための方策などについての講義のほか、社員の方々の自発性を引き出すためのワークショップも行っています。さまざまな形で、職場改善のための活動を推進していますね。
 最終的には、業務に携わっている社員の方々の中から改善点が導き出されればと考えています。そして、皆さんがより仕事を楽しんでこなし、ワーク・ライフ・バランスを実現して下さったらうれしいですね。

「男はいらない!」と発言していた商工会連合会時代

 そもそも、私が男女共同参画に繋がる視点を持ったのは、商工会連合会に勤務していたときのことです。1993年に、小規模企業の労働環境改善のための研究事業を行ったのですが、その際取り上げられたのが、基幹労働力としての女性の活用の重要性でした。
 考察を進めるなかで、若年労働力人口の減少と高齢化社会の到来により、女性を尊重し、育て、活用できる企業でないと存続が難しくなることは容易に考えられました。さらに、生産と消費の分野における女性の地位の重要性についても、ますます高まることが予測されました。女性に人気のある商品でなければ売れない。女性にとってイメージの良い企業でなければ人材が集まらない。女性に優しい職場でなければ現場が活性化しない――。つまり、生活者であり、企業の従業員でもある女性に支持されなければ、企業は成り立たないとの結論に至ったんです。
 私自身の考え方についても、女性の能力は、男女の区別なく、同等のものとして評価することが可能であるし、それが当然だと思っていました。ですから、当時の商工会は、旧来の男性中心の組織だったのですが、女性も重要な役職に就けるよう、働きかけをしたこともあります。結果として、当時私が所属していた事務局では、女性が初めて事務局長に就任しました。彼女のリーダーシップにより、以前より業務が円滑に進むようになりましたね。他にも、女性職員がそれぞれの分野で目覚ましい活躍をしていたこともあり、私は当時、この職場に「男はいらない」と断言するほどでした。
 私自身の経験から学んだこととして、従業員の資質を見極める際には、男性、女性という観点で比較をするより、その人の個性に目を向け、「この人だから」という理由で判断をすることが大切だと思います。
 男女共同参画に対する意識は、以前に比べれば高まってきたと思いますが、それでもまだ十分ではありません。特に中小企業では、経営自体の不安定さから、社員の心の充実や、ワーク・ライフ・バランスなどについてまで配慮する余裕がないのが実情です。
 しかし、経営者の方々が高い意識を持てば、比較的スムーズに男女共同参画を浸透させていくことができるのは、中小企業ならではのメリットであると思います。当所のお客様も地域の中小企業が大半ですから、今後もじっくりとお話をさせて頂き、男女共同参画による経営改善実現のお役に立てればと考えています。

経済不安の中での顧客開拓が会計事務所の課題

 2008年秋のリーマン・ショック以降、企業を取り巻く環境は厳しさを増す一方です。それに伴って、会計事務所のあり方も変わってきています。以前は、極端なことを言えば、月次の会計処理と決算申告さえしっかりこなせば、お客様は満足してくださいました。経済が右肩上がりで、努力をしなくてもお客様が増えていった時代は、それでもよかったんです。
 しかし、ここ数年、私どものお客様も大変な時期を迎えています。会計事務所としてお客様に何かして差し上げたいと思ったとき、数字を追うことはもちろん必要ですが、それだけでは足りない状況になってきています。
 もちろん、当所も一企業として利益を確保しなければなりません。お客様から戴く報酬を上げることは望めないなかで、私どもが努力していかなければならないのは、取引社数を増やすことです。
 とは申しましても、ほとんどの企業がすでに会計事務所との取引をお持ちのなかで、新たな顧客を開拓することは容易ではありません。お客様の経営内容をすべて見せて頂くという業務の特性上、会計事務所を変え、一から関係を築いていくことは企業側にとって少なからぬ負担になります。たとえ、現在取引をしている会計事務所に何らかの不安や不満をお持ちだとしても、新商品を買うように、気軽に試してみるということはできないんです。
 ですから、これらの課題を解決していくために、これまでとは違った観点で、他の事務所に対しての優位性を確立することが大切なんです。お客様に他社にはないサービスを提供すると同時に、顧客を開拓していくこと。それが私自身の重要なミッションでもあります。
 私は他の所員と異なり、特定の業務に縛られることのない「フリーランサー」的な存在です。その立場を活かし、お客様の細かな要望にもお応えできる柔軟性を身につけたいですね。そして、それらを積み重ねることにより「一味違う」会計事務所として、お客様の信頼を得ることができればと思っています。お客様には、今後も当所をどんどん活用していただき、元気な、「選ばれる会社」になって頂きたいと心から願っています。

取材日:2011.7




【 沿 革 】


1984知久正博税理士事務所 開業
1986~経営研究会 開催
1991有限会社知久会計センター 設立
2004新社長大学 開校
2009女性所員時短勤務 開始
2010「お客様応援隊長」に山本正己さんが就任
男女共同参画社会づくり宣言事業所 登録
2011有限会社スズキ工業、静岡県男女共同参画課主催セミナー 開催
イトウシャディ株式会社、静岡県男女共同参画課主催セミナー 開催予定

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