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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

保育と雇用の合わせ技で、地域の子育てを幅広く支援。
少子高齢時代の課題解決ビジネス。

株式会社あそび学園

株式会社あそび学園


常務取締役

大石素三(おおいし・もとみつ)


- WEBサイト -

認定こども園 あそびこども園浜松

さまざまなニーズに対応する子育て支援施設

 あそび学園は、「あそびこども園浜松」をはじめ、「浜っ子保育園」を運営している株式会社です。株式会社が保育事業を行っているのは、静岡県内では珍しいケースかもしれません。2009年からは、デイサービスや宿泊ショートステイなど、介護事業にも進出しました。
 会長を務める平山秀男が、1996年、「あそび塾」を開設して以来、当社は、地域に根差したサービスを目指しています。なかでも、2008年、静岡県初の「認定こども園」としてオープンした「あそびこども園」は、さまざまなニーズに応えるサービスを提供しています。
 朝から夕方まで、お子さんをお預かりする「保育園コース」、朝から午後1時までの「幼稚園コース」、予約制でお子さんをお預かりする「一時コース」のほか、バイオリンや英会話、書道などのレッスン、小学校1~6年生対象の「学童保育」、さらには病後児をお預かりするサービスなどもあります。
「認定こども園」というのは、保育所と幼稚園の両方の機能を備えた施設のうち、「就学前の子供に教育や保育を提供し、地域の子育て支援を行う機能がある」と、都道府県が認めた施設で、制度そのものは国が定めています。国の基準を満たしていることを示す認定は、子供たちを預ける保護者の方々にとって、大きな安心材料となります。
 認定こども園には、「幼保連携型」「幼稚園型」「保育所型」「地方裁量型」と、4タイプありますが、当園はそのうち、現地の環境やニーズに合わせた「地方裁量型」です。

0歳児から高齢者までサポートし地域に貢献

「あそびこども園」には現在、保育園コースに190名、幼稚園コースに58名と、全部で250名近いお子さんをお預かりしています。コースは分かれていますが、クラスは年齢別で、同じクラスに「保育園コース」「幼稚園コース」の子が混在しています。当社が力を入れている右脳教育など、独自のカリキュラムは、どちらのコースでも同じように受けられます。
 園児数が増えてきたこともあり、「あそびこども園」は2009年、現在の東区下石田町に移転しました。その際、子供たちと高齢者の交流ができるよう、小規模多機能型の介護ホーム「あそびケアホーム東」を、隣の敷地に開設しました。
 誕生日会や食事会など、折に触れて子供とお年寄りの交流の場がもてることは、子供にとっても、高齢者にとっても、いい刺激になります。園児の家庭の多くは核家族ですから、日常的にお年寄りと接する機会は、ほとんどありませんし、一方のお年寄りにとっても、子供たちと触れ合った後は「楽しかった!」と、表情がいきいきしています。子供と触れ合うと、血圧や脈が安定するというデータもあるそうです。
 0歳児の赤ちゃんからお年寄りまで、幅広くサポートする施設として、地域の方々に知ってもらえること。さらには、幅広い人材の雇用で、地域に貢献すること。――この2つが、私たちの大きな目的です。

母子家庭のお母さんたちにも働くチャンスを

「あそびこども園」を支える職員は、全部で45名。保育士、幼稚園教諭、給食の栄養士など、資格が必要な仕事が多く、女性が中心の職場です。「あそびケアホーム東」についても、介護福祉士やケアマネージャー、ケアワーカーなど、専門的な知識や資格が必要です。
 採用に際しては、私たちが求める資格をおもちの方、あるいはこれから資格を取ろうという意欲をもって働ける方であれば、女性でも男性でも関係ありません。むしろ、保育も介護も、女性の力なしには成り立たない職場です。子育てしながら共働きしている女性や、ひとり親として仕事も家庭も頑張っている女性にも、当然、門戸を開いています。実際、面接をして、「是非うちで働いてほしい」と思った女性が、たまたま母子家庭だったということもありました。
 今から3年前、「浜松市母子家庭等就業・自立支援センター」から、「母子家庭の就業を支援してほしい」という依頼がありました。母子家庭に対する偏見のない当社の労働環境が、人づてに伝わったようです。もちろん私たちも、資格のある優秀な人材が来てくださるのは大歓迎ですから、支援企業として登録し、そのご縁で2008年前後から、3~4名のスタッフを採用しました。
 採用担当である私も、他の職員も、母子家庭に対する偏見や先入観は、まったくありませんね。家庭にいろいろな事情があるにせよ、「子供を育て上げるためには自分が頑張るしかいない」という思いの強い人が多いですし、責任感をもって仕事をしているという印象があります。プライベートな部分での辛さはわかりませんが、明るく前向きに生きている彼女たちの姿勢は、周囲にもいい影響を与えているのではないでしょうか。
「あそびこども園」では、現在、6人の母子家庭のお母さんが勤務しています。2010年、「はたらく母子家庭応援企業」として、厚生労働省の表彰をいただきました。しかし、とくに母子家庭を優遇しているという意識がないのが実情なんです。

子供が熱を出しても病児保育があれば勤務できる

「あそびこども園」の職員として、母子家庭の女性に働いてもらうにあたっては、受け入れ態勢を整える必要がありました。まず、子供の急病のときや学校行事など、どうしても仕事を休まなければならない場合、フォローできるシステムを作りました。そうでないと、自分以外に頼る人がいない母子家庭のお母さんたちは、働き続けることができません。
 幸い、保育園は小学校との連絡が密なので、三者面談や運動会など、年間行事は大よそ把握しています。また、「あそびこども園」では、園長も子供をもつ父親であり、主任保育士の女性も子供がいます。子育てをめぐるさまざまな事情に対する理解は、かなり得やすい環境だと思いますね。
 当園では、子供の用事で休まなければならない場合、有給休暇や振り替え休日を使わなくても、事前に申請しておいた時間だけ休んだり、遅れて出勤することができます。担任のある先生が休む場合は、他の先生がフォローに入ります。
 また、子供が熱を出した場合などは、子供と一緒に出勤することが可能です。病児保育があるので、1日ワンコイン、500円で預けることができ、仕事の間は、他の保育士や看護師に見てもらえます。子供にとっても、職員自身にとっても、お互い近くにいるほうが安心ですよね。私たちも、職員が休んで、仕事に穴が開くよりずっといいわけです。
 こうした仕組みができたのは、当園の子供たちに、母子家庭や父子家庭の子がいることも関係しています。ひとり親がどんなときに困るか、どんなふうに対応したら良いのかなど、生の声が拾いやすかったので、そうしたニーズに応えるかたちで、病後児保育、学童保育などを行っているわけです。
 私たちが提供するサービスは、子供をもつ親が対象です。にもかかわらず、同じ立場にある子供のいる職員を大切にしないのはおかしい――そんな建前も、会社としてないわけではありません。しかしそれ以上に、病気の子供を預かってでも、彼女たちに働いてほしいと思っています。
 というのは、「あそびこども園」での仕事は、子供を相手に、頭脳も体力も知識もフル回転させなければ務まりません。そういう仕事に取り組んでもらっていることに対し、感謝と敬意の意を表する意味でも、最大限のバックアップは厭わないつもりです。
 希望があれば、介護施設へ異動も可能です。それぞれのやり甲斐を引き出せるよう、いろいろな面で、臨機応変に対応しています。

ひとり親に対する偏見のない社会を目指して

 ひとり親就労の難しさや、なかなか周囲の理解が得られない厳しい現実は、「浜松市母子家庭等就業・自立支援センター」との関わるようになって、私自身、初めて知りました。私たちは日頃、「人を使って人を預かる」事業を通じ、お客様のニーズに応えるサービスをしているなかで、さまざまな事情に直面します。そういうことが、偏見の少ない企業風土に結びついているのかもしれません。
 私は以前、百貨店に勤めていたことがあります。当時を思い出してみても、母子家庭の女性が、パートで勤務していたことはありましたが、正社員にはいなかったように記憶しています。
 百貨店時代の友人と話をしたとき、あそび学園の採用方針について、話をしたことがあります。しかし「普通はそこまでできない」と、指摘されました。「突発的な事態が起きれば、仕事より子供を優先するだろうから、会社としては、責任ある仕事を任せられない。昇進も難しいだろう」というのが、友人の言い分です。
 確かに、私たちのような業種だからこそ、受け入れ可能な環境が整えられるというのも事実でしょう。製造業やサービス業などの場合、病気の子供を預かってくれる体制は、ほとんど整っていませんから。
 しかし日本でも、離婚する人が増えており、母子家庭や父子家庭は、もはや珍しくなくなりました。若い世代を中心に、ひとり親世帯に対する偏見も、少なくなってきています。今後、少子高齢化社会の進展で、労働人口の減少が、わが国の切実な問題になってくることは、目に見えています。
 今待たれているのは、企業サイドの柔軟な姿勢ではないでしょうか。母子家庭でも父子家庭でも、既婚でも未婚でも、能力とやる気さえあれば、誰にでもチャンスが与えられる社会。――あそび学園のひとり親の就労支援は、社会をそういった方向にリセットするための、地道だけれど有意義な活動だと信じています。今後も続けていきたいですね。

社会の動向と地域のニーズに即したサービス

 当社では2010年から、惣菜事業「あそびキッチン」や食品事業「あそび食品」をスタートしました。「あそびこども園」周辺の農家さんが作った野菜を積極的に使って、身体にやさしい地産地消の惣菜や給食を、保育園やひとり暮らしのお年寄りへの食事宅配として提供しています。
 事業を通じて、私たちが目指しているのは、地域コミュニティとの関連性強化です。ご近所の高齢者に、店舗管理をお願いするなど、事業の展開にともなって、地域に雇用を生み出すことも期待できるでしょう。
 今後、「あそびケアホーム東」の隣に、長期でステイできる介護施設を増設することも検討しています。現在、ショートステイの利用者で、長期ステイを希望する方たちのニーズに応える一方で、介護士の資格をもつ、地域の人たちの雇用機会にもつながります。
 2012年には、袋井市に、認可保育園を設立する予定です。今年3月の東日本大震災以降、浜岡原発が操業停止となったことで、土日に勤務する人が増えていますから、日曜日にも、保育園をあける予定です。
 今から15年前、会長の平山は、待機児童が多くて困っている人々を助けたいという思いから、あそび学園を設立しました。私たちは今後も、社会の動きや地域のニーズに対し、できるだけ前向きに応えていきたい。町内会や自治会なども巻き込んで、子供たちや子育て中のお母さんやお父さんを地域で見守り、地域全体で高齢者を大切にしたい。そういう会社でありたいと思っています。

取材日:2011.7




【 沿 革 】

1996「あそび塾」設立
1999「あそび学園」に名称変更
2000「浜っ子園」設立
株式会社「あそび学園」設立
2002「浜っ子園」と株式会社「あそび学園」を統合
2008「あそびこども園浜松」を設立し、静岡県内初の「認定こども園」に
「浜松市母子家庭等就業・自立支援センター」への協力を開始
2009「小規模多機能型居宅介護施設「あそびケアホーム東」設立
2010惣菜事業「あそびキッチン」スタート
食品事業「あそび食品」スタート
「はたらく母子家庭応援企業表彰」を受賞

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