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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

県内の名刹でいただけるのは、厳選した静岡茶。
自分と向き合う時間も提供する「寺かふぇ」。

YOTTO

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寺かふぇ konoyo 主宰・アートワーク


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寺かふぇ konoyo

お寺で静岡茶を味わうイベント「寺かふぇ」


 “寺かふぇ”とは、カフェでお茶を飲むように、お寺で静岡茶をいただきながらのんびりとした時間を楽しむシンプルなイベントです。お寺のお茶室や本堂の縁側などを1日だけお借りし、いらしてくださった方に、その都度選んだお茶をお出ししています。1年ほど前から始めてこれまで6回行ったのですが、様々な方々から賛同をいただき、毎回100名以上の方にお越しいただくようになりました。
 なぜお寺で?とはよく聞かれるのですが、東南アジアや南アジアのお寺が現地の人たちの生活の一部になっているのを見て惹かれたことがまずありますね。私は以前、ミャンマー、ラオス、ネパールや周辺の国々を巡る旅をたびたびしていました。宿泊先も行き先もノープランで、いわゆるバックパッカーですね。アジアの国々でたくさんのお寺を見た中で、現地の人たちが自然とお寺に集っていることに気づきました。1日の中に祈る時間をきちんと持っていますし、それ以外にただ座っておしゃべりしている人もいます。私には、そういう時間がとても貴重なものに思えたんです。また、私の祖父母がお寺の管理をしていたので、小さい頃から身近な存在だったこともありますね。
 28歳のときに地元の静岡に戻ってからは、静岡のよさ、なかでもお茶のおいしさにあらためて気づきました。茶道も始めて、そのおもてなしの心、日本人の心の美学にも触れました。礼儀作法や書、花、器など、一杯のお茶を淹れるためにここまでやるのか、と驚き、お茶の奥深さを知りました。アジアを旅したことでより日本らしさに惹かれ、東京に住んでいたことで静岡らしさに惹かれるようになりました。
 それらの思いが積み重なり、そして、同じ気持ちを共有するいしかわゆかりさんと出会ったことで、ユニットkonoyoと寺かふぇは生まれたんです。

名刹巡りとおいしいお茶探しからスタート

 はじめて寺かふぇを開催した場所は、静岡市にある洞慶院。約500年の歴史を持つ名刹で、参道の入り口には樹齢300年以上になる4本の杉の巨木があります。他には、藤の花が咲くころに場所をお借りした、茅葺の屋根やなまこ壁が残る清水の一乗寺、美しい襖絵や彼岸庭のある地持院など。いしかわさんとちょこちょこと県内のお寺を巡って、会場を探しています。素敵なお寺に出会ったら、住職さんに寺かふぇのお話をさせていただくのですが、いつも賛同していただいています。「本来の姿を取り戻し、多くの人に来てもらえる寺にしたい」と様々な行事を企画されている方もおり、開催ごとに制作しているフリーペーパーに寄稿してくださる住職さんもいらっしゃるんですよ。
 お茶は、その都度違う静岡茶を選ぶようにしています。農家に足を運び、自分たちが本当においしいと思うものをお出しするよう徹底していますね。生産者の方から話を聞き、一番いい淹れ方を教えてもらい、それを伝えること。そうすることで来てくださった方にも意義を感じてもらいたいんです。
 これまでにお出ししたお茶は、茂畑 しばきり園さんの「生新茶」や両河内 山本園さんの「大通院」など。店頭では手に入らないものや、品評会で入賞したもの、初取引で最高値がつくことで知られているものもありますが、値段や評判が重要なわけではないんです。あくまで自分たちがおいしいと思えるかどうかが大切なんですよ。譲っていただいたお茶を初めて飲んだときは、脳みそがふるえるほどの衝撃(笑)で、声も出ないということもありました。「このお茶をたくさんの人に飲んでもらいたい」と心から思いましたね。
 夏の時期には、昼間では暑いかなと思い、夜に開催したこともあります。竹で手作りした灯りを灯したり、雰囲気に合うと思って二胡と琴の演奏隊を呼んでみたり。他に写経や座禅をしていただいたこともありました。固定のルールなどはないので、その都度おもしろいなと思ったことを取り入れていきたいと思っています。今後はご縁があれば、県外でもやってみたいですね。「静岡茶」が一般的なお茶として一括りにされているのが少し悔しいので、静岡茶は産地によって味も香りも様々であることや、その違いが分かるともっとお茶が楽しくなることを伝えたいです。

寺かふぇが生む出会いや小さな時間を大切に

 寺かふぇをやっていてよかったなと思うのは、活動を通じていろんな人と出会えたこと。寺かふぇのために器を作ってくださった陶芸家のご夫妻やお寺の住職さん、茶農家さん。普段は接する機会のない方々のお話をお伺いできたことは貴重な体験です。趣旨をご理解いただき、善意をよせていただいていることには感謝の気持ちでいっぱいですね。当日お手伝いをしてくださる助っ人さんも、毎回5、6人の方が参加してくださいます。ものづくりをされている方も多くて、刺激を受けることも多いですね。
 寺かふぇをはじめたきっかけの一つでもあるんですが、今の世の中は、便利なことは増えたけれど、その分省略されてなくなってしまったことも多いと思うんですよね。手や足を使ってやっていたことが必要なくなって、五感を使わなくなり、そして喜怒哀楽も少なくなってしまった気がするんです。私は、手も足も五感も総動員して、意識的にいろんなことを感じることができれば、生き生きと生きられると思うんです。私にとってお寺は、いろんなことを感じられる場所。日本らしさや風情、歴史の重み。街中で気軽にそういうことに触れられる場所は、お寺以外にはなかなかないと思いますね。私は日本人であり、静岡人であるということが自分の核になっているから、それを感じることも大切なことだと感じています。だからといってすぐに何かが変わるわけではないけれど、そういう小さな積み重ねが大事だと思います。寺かふぇもその一つ。寺かふぇを通して生活の中に小さな時間が生まれることで、いろんなことが少しずつ変わっていけばいいと思いますね。

取材日:2011.2



静岡県静岡市生まれ 静岡市在住


【 略 歴 】

1998進学のため東京に引っ越す
2005~2007たびたび東南アジア、南アジアを旅する
2008地元静岡に戻る
茶道を始める
2009いしかわゆかりさんと二人でユニット「konoyo」結成
2010いしかわさんと「寺かふぇ」を始める

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