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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

床上を、軽やかに舞う天使たち。
その成長を支え、見守る新体操コーチ 。

岡本さおり(おかもと・さおり)

岡本さおり(おかもと・さおり)



アンジュ新体操クラブ 代表


- WEBサイト -

アンジュ新体操クラブ

初年から100人を超えた生徒

 私自身は中学高校で新体操をしましたが、水鳥体操館出身で、会社員をしながらそちらで手伝いをしていたんです。でもメーカー勤務だったので残業も多く、思うように教室には行けませんでした。その間ずっと思い続けていたのは、新体操のこと。発表会の手伝いに行った長野の新体操クラブが400人規模で、体育館の中には幼稚園児から高校生まで、たくさんの部員がいて、静岡にもこんなクラブがあったらいいなあ、と。それで26歳のとき、思い切って会社を辞めて定時に終わる仕事を探し、教室を始めました。
 最初に募集したときは50人ぐらい集まって、小学校の体育館を借りて始めました。そうしたら他の学区の人からも、うちのほうでもやってほしい、と声がかかり、そこでも50人超。一年目から生徒さんが100人を超えていました。そのとき思ったんです、静岡にもこんなに新体操をやりたい人たちがいたんだなあ、と。しばらくは仕事とかけもちでしたが、1年後、教室に専念するようになりました。

ないものを嘆くより、個性を伸ばす指導

 新体操と言えばみんな顔が小さくて、手足が長くて…と思われがちですが、容姿や技術、運動神経、すべてそろっているパーフェクトな子なんてめったにいないんです。もちろん素質や柔軟性もあるに越したことはないですが、個性を伸ばしていけば、表現力がすばらしかったり、手具の扱いがうまかったり、その子のいい特徴を伸ばしていくことで、得点はもちろん、本人の自信にもつながっていく。雰囲気や表情もぐんとよくなっていきます。
 だから選手たちには「今できることに力を尽くす」ことを伝えたい。新体操ってだれでもできるものではないんです。柔軟性も人それぞれで、体が硬くてなかなか上手にならない子もいます。手具もロープ、フープ、ボール、クラブ、リボンと5つもあるので、不器用な子は使いこなせるまでに時間がかかります。そうすると、つい私も選手も、ないものを嘆いてしまうんです。「体が硬いからダメ」「不器用だから向いてない」「〇〇ちゃんはいいな」と…。努力が足りないから、ではなくて、もともと持っていないから無理だと思ってしまうんです。でも、そういうことを思ってもうまくはならないし、いい意味で楽しく練習はできません。確かに弱い部分を強くしていくことも大事ですが、自分のいいところを見つける、好きなことをさせてもらえることに感謝して頑張ることが「今できること」だと、私は思います。それは私自身にも言えることで、彼女達の気持ちはすごく分かるけれど、でも、やっぱりそこを見ているだけでは何も解決しないんですよ。

選手の成長の理由は「出会い」

 最初はアンジュの選手たちが、世界大会はおろか、全国大会にも出られるとは考えていませんでした。それでもずっと「正しい練習」を心がけてきました。「正しい練習」とは「失敗しない練習」のことです。
 新体操は手具を使いますが、それらを落としてしまうことは「失敗」です。いつもかかとを上げたきれいな姿勢で立つのが基本で、「立つ」動作一つにしても立ち直したり、足を上げてバランスを取るときにグラグラしてしたり、そういう小さなものも全部失敗。きれいにきちっと立てないと、次のバランスを取れないし、正しい姿勢で投げないとボールもまっすぐ上らない。一つひとつをきちんとできるようになるのが「正しい練習」だと私は考えています。そこを流してしまう子はやはり失敗が多い。それが重なると練習中に自信が持てないので、本番前も不安になり、本番でも失敗する。正しく立ち、正しく手を上げる「正しいポジションで美しく」が第一条件です。
 クラブを立ち上げて10年以上、今までたくさんのいい選手たちが育っていきましたが、その一番の理由は「出会い」でしょうか。最初のころは日本全国からロシアにまで指導者の講習に出かけて行き、学んだことを持ち帰っていろいろやってはみましたが、それがそのまま自分の選手たちに合うものばかりではないんですね。合うものを探しながら、手探りでやってきました。全国大会やナショナルで活躍したような子たちが、他で新体操をやっていたらどうだったかは分からないし、能力がもともと高かったり、相性もよかったのかもしれない。幸いにも私は、そういう子たちとたくさん出会えて、自分が思っている以上に評価をいただいて、そういう機会に恵まれた。それはほんとうにありがたいことだと思います。
 今回、プロフィールを書いていて感じたんですが、私が書くことって選手のことだけだなあ、選手に生かされているなあ、と。30代はそんな風に、家族はもちろんスタッフや選手の協力のおかげで、私自身、とても充実していました。40歳になってさらにこれから10年、面白いだろうなと期待しています。

取材日:2010.12



静岡県静岡市生まれ 静岡市在住


【 略 歴 】

     
1996 新体操クラブ発足
2001 ロシア・モスクワ指導者セミナー参加
2002 全日本Jr.新体操選手権大会発出場(佐津川愛美)
2003 全日本Jr.新体操選手権・全国中学校体育大会(井上可彩)
全国高等学校体育大会・国民体育大会静岡大会(西村春香)
中学・高校の4大大会全て出場。
国体全国大会では新体操少年少女の部優勝に貢献
2005 ナショナル強化指定選手認定(安本恵理)
ナショナル強化コーチに就任、国内外試合多数出場
ロシア、ドイツ、韓国へ遠征
ユースチャンピオンシップ 種目別ロープにて初の全国優勝
2006 全日本Jr.新体操選手権大会団体初出場6位入賞
2008 ブルガリア・ベルギーの国際大会出場(安本恵理)
2010 ナショナル強化指定選手認定(池ヶ谷晴香)
全日本Jr.新体操選手権大会個人総合優勝・種目別4目すべて優勝の完全優勝を果たす(池ヶ谷晴香)

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