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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

風を切り、小さな体でコースを駆け抜ける。
「世界」を目指す、女子高生ライダー。

三好菜摘(みよし・なつみ)

三好菜摘(みよし・なつみ)



ロードレーサー(オールスターモータースポーツ所属)


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Team M!
風の香りと…
72Natsuのブログ

あれに乗りたい!からポケバイに

 バイクとの出合いは10歳のとき。両親に連れられて、鈴鹿8耐と世界GPを観に行ったのがきっかけです。それまではバイクというものをあまり知らなかったんですが、初めてプロのライダーのレースを観た時に「面白そう!乗ってみたい!」と思って。でも、どうやったら自分もバイクに乗る事が出来るのか分からなくて、親には「私もやってみたい」という気持ちだけ伝えました。
 そうしたら両親が色々と調べて「ポケバイっていう小さなバイクがあるよ。それから始めてみたら?」と教えてくれて。ポケバイは、早い子は3歳ぐらい、平均でも5歳ぐらいから始めるそうなんですが、私が始めたのは10歳の終わりぐらい。両親はポケバイを試乗したコースの方に「もう大きいから無理」と言われたそうです。それもそのはず、ポケバイは排気量が30cc。体が大きいととても不利なんです。
 でも両親にポケバイを買ってもらって近くの河原で練習を始めました。最初の練習ではいきなり転んでしまって・・・。そこから逆に「絶対これを乗りこなしてやる!」という気持ちが湧いてきたんです。それからは、母が仕事から帰ったらポケバイを車に積んで河原に行き、暗くなるまで練習する毎日。ある程度乗れるようになってからは、週末に千葉や神奈川、奈良のコースにも練習に行きました。毎週どこかに行っていて、家にはいなかったですね。

調子のいいときは「楽しく乗れているとき」

 ポケバイに乗り始めて1ヶ月でレースに出場しました。その後は千葉で開催されていたポケバイメーカー主催のレースに5月から参戦。初優勝は7月でした。
 ポケバイは入賞することで階級が上がっていくんですが、最終的には目標であったA級まで昇格することが出来ました。それまでの間、毎月どこかのサーキットでレースに出続け、A級に昇格したのを区切りに11歳でミニバイクに、その半年後の12歳の時にはS80(ロードレース)にステップアップしました。
 最近になって、レースを続けていく中で最終的にどうなっていたいかという、シーズン後の目標を定めてレースに臨むようになりました。勝ちたい気持ちは強いんですが、なかなか勝てないこともあります。うまく自分の中でスイッチが入ると、どんどん行こう、抜いてやろうと、気持ちが前へ前へと出てくるけれど、そういう時って、たいてい自分が「楽しい」と思っている時なんです。だから思ったように調子が出ない時は、一度頭を切り替えて、楽しく、楽しく…と思うようにしています。レースには多くの時間も費やしているし周りのたくさんの人の力もかかっているから、出来るだけ落ち込む方向に行かないよう、何事も前向きに考えるようにしています。
 それでも2008年はあまりにも結果が出なくて、バイク自体が楽しくなくなったことがありました。一年の最後のレースが終わって、何がダメだったんだろうと考えたとき、チームの人とのコミュニケーションがうまく行かなかったことや、その時に乗っていたバイクの特性を掴みきれなかったこと、練習中に骨折して入院したことが思い当たりました。結局その年は楽しく乗れたことがなかったな、と。それを両親と相談し、結果的にそのチームからは離れてバイクも2007年に乗っていたものに戻しました。
 2009年は、初年度にお世話になったチームにもう一度サポートをお願いしました。そこの監督さんは「楽しく走らないと結果は付いてこない」というスタンスの方で、スタッフの方、応援してくださる方々の協力もあって、自分でもかなり楽しく乗れる一年になれたと思っています。
 2010年はさらに自分を磨くために、現在所属しているチームへ移籍しました。厳しく、でも温かい人柄を持った大変信頼出来る監督やクルーの方との出会いもあり、少ない参戦数ではありましたが、まずは目標を達成出来たと実感出来たし、次の年に繋がる大きな意味を持つ一年になったと感じています。

バイクから離れたくない。夢は世界へ

 バイクの魅力は「全部」と言いたいですね。アクセル開けた瞬間の加速感や、ブレーキングの瞬間。レースはブレーキの我慢勝負だったり、早くアクセル開けたもの勝ちだったり。そうやって競うのも楽しいんです。バイクをそんな風に楽しむのもありだな、いろんなところに魅力ってあるんだなということに、最近になって気づきました。
 実はこれまで、親には何度もやめてくれと頼まれたんですよ。結果も出せず、モチベーションも上らず…という時期、普段の生活でもネガティブな考え方を引きずってしまうから、一度休んで見つめ直しては、という話もされたけれど、私はやめたくも休みたくもなかった。バイクから離れてしまうことが怖かったんです。一度休むと、その後続けられなくなるんじゃないかと。だからそれだけは絶対に嫌だったんです。
 今一番の目標は、まずは全日本で表彰台に立つこと。いつかは実力が伴った状態で大きな舞台に立てれば、と思っています。そして、いい意味で観客の皆さんを引き付けられるライダーになりたい。今のロードレースは、観客の皆さんとバイクとの距離が離れてしまっている感じがするので、その距離がもっと近くなればいいなと思います。
 例えば、ピットウォークと言って、ピットにお客さんが入れてバイクを間近に見られる時間があるんですが、大抵バイクの周りに柵が置かれてあったりして近くでバイクが見られない。お客さんも「バイクは触ってはいけない物」と思われているみたいです。メーカーやチームによっては色んな事情から触って欲しくない、見られたくない、というところもあるようですが、私はどんどん見てほしいし興味も持ってほしいんです。そういう風に、バイクやライダーと観客の皆さんとの距離が縮まることで、バイクやレースへの見方が変わって、楽しんでレースを見る人が増えてくれるとうれしいです。

取材日:2010.12



静岡県掛川市生まれ 掛川市在住


【 略 歴 】

2004 10歳でポケバイを始める。
関東・関西のレースに参戦し、最終的にA級まで昇格
2006 11歳でミニバイクにステップアップ。白糸(静岡)のレースで初優勝
その後半年で12歳の時にS80(ロードレース)にステップアップ
ロードレース初参戦となるMCFAJのレースでの優勝を機に筑波・岡山の地方選に参戦
ロードレースジュニアライセンスから国内ライセンスに特別昇格
2007 全日本ロードレース選手権GP-MONOクラスに参戦開始
国内ライセンス内では8位、国内・国際の総合では20位
同年、13歳で国際ライセンスに昇格
2010 全日本ロードレース選手権GP-MONOクラスに2戦のみスポット参戦
第4戦(SUGO)で8位入賞。最終戦(鈴鹿)では17位でポイントを獲得し年間ランキング22位
2011 2011 全日本ロードレース選手権GP-MONOクラスにフル参戦予定
(オールスターモータースポーツ所属)

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