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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

人生の本領発揮は70歳から!
平等で公平な働き方が、わが町を元気にする。

青森千枝美(あおもり・ちえみ)

青森千枝美(あおもり・ちえみ)



「伊豆・松崎・であい村 蔵ら」代表理事



地元の味と魅力的な商品が並ぶ「蔵ら」

「伊豆・松崎・であい村 蔵ら」。手作り品を販売したり、地元の食材を使った「ひる膳」を出したり、2階にギャラリーもある店です。オープンして1月10日で3カ月が経ちました。もともと自転車屋さんだったこの場所を、メンバー全員で色を塗ったり掃除をしたり協力して、オープンにこぎつけたんです。定期的に反省会を開きますが「わいわいやってばかりではいけない」「一番忙しいときに集中して集まれるように」「10時オープンだから物品はちゃんと用意する」など、たくさん意見が出るんですよ。

「蔵ら」を開こうと思ったきっかけは、ここに住んでいた高齢者の女性に相談されたこと。

「建て売りになってしまうから、何とか守る方法はないでしょうか」と。松崎町内には歴史的に価値のある建物、とくになまこ壁の蔵がたくさんあって、ここもその一つ。築150年ぐらいでしょうか。町で買ってほしいと希望していましたが、町もそんな余裕はない。それで、何とかしようと知り合いや友人に呼びかけました。ちょうどメンバーの一人が「ワーカーズ・コレクティブ」という形を提案してくれて、それがここでやりたいことにピッタリだったので、24人で作り上げたんです。

 ここには3つの理念があって、一つはまち起こし、もう一つが高齢者でもいきいき活動できる場所づくり、そして3つ目が一人暮らしや高齢者が気軽に遊びに立ち寄ったり、食事ができる場所づくり。まち起こしのための店なんだから、町に人を呼ぶ招き猫にならなければ。それにはやっぱり食があって、魅力的な商品もほしい。さらに、女性がいくつになっても働ける場所でありたい。「蔵ら」はそんな思いがつまった店です。

「共同出資・働き手は対等」がぴったりの形


 ワーカーズ・コレクティブは組織の一つの形です。共同出資して働き手を担い、利益があったものはみんなで分ける。2時間来た人も10時間働いた人も時間給で分けて、300円になるかもしれないし1000円になるかもしれない。今日からローテーションを組んで、なるべく少ない人数で回して、少しでも労働分配金が上るように自覚してやっています。「雇う・雇われる」の関係ではなく、全員が対等。代表者は私ですが、私も労働の対価は時間給でいただいています。

 労働としてやったほうが生きがいがあるし、みんな責任感を持つんです。料理の得意な人、小物作りが好きな人、PCが使える人、それぞれ得意分野があって、自分ができることで活躍します。「仕事」というと、私は何もできないから…という人がいるけれど、昔の人って、和裁や料理を普段からやってきたから、聞けば何でもできるんです。何でもいい、その人の力、才能、そういうものを引き出すのが私の使命だと思っています。そうやって仲間になった人も何人もいますね。ここは「お母さんの料理の店」なので、お母さんの味を楽しんでもらっていますが、プロみたいに料理が上手な人、おいしい野菜を作っている人、味噌を作っている人、いろんな人材が集まっています。

 もちろん、最初は不安がありました。でもメニューを決めるとき、自慢料理を作ってきてもらったんですが、それがすごかった。普通、そういう時って遠慮しがちだけど、みんな「これとこれができる」「私はこれを作れる」と、たくさんのものが並んだ。それを見たとき、これは大丈夫だ、と思ったんです。

人生、70歳からが本番!

 私自身は看護師を15年、旅館を22年やって、その後は子供や高齢者に対するボランティアをしています。年金をいただくようになったら、国からお給料をいただいているつもりで、町に恩返しのつもりで、人のために働こうと若い頃から決めていたんです。今は、この松崎のまちづくり。ここがオープンしてから、町長さんも応援して下さっていますし、町の人たちもすごくあたたかい。野菜採れたからあげるよ、と好意的に見守っていて下さいます。

 ずっと松崎に住んで、昔の観光客で栄えていた頃の松崎も知っている私だからこそ、当時みたいに盛り立てたいという気持ちが強いんです。そのためには、高齢者が健康で頑張らないと。若い人は子育てや仕事で忙しいでしょう?

 今、この店のために働いている主力メンバーは70代が一番多くて、物作りをしている人は最高齢が92歳。いくつになってもできるんだ、というモデルになりたいんです。人間って本当は、70過ぎてからやっとできることの方が多いんですよ。子供が手を離れても、少し前まではお産の手伝いに行ったり、親としてもまだやることがあった。子育ても、孫の世話も終わって、やっと自分の人生になる、それが70歳。そうなればもう怖いものなんてないし、経験もある。持っている引き出しは全部開いて、地域のため、人のために出さなきゃもったいないです。

 悔しかったら70になってみな、と胸を張って言えるような、いきいきした70になんなきゃだめ。70になったら分かりますよ、と胸を張りたいですね。

取材日:2010.11



大阪府生まれ 静岡県賀茂郡松崎町在住


【 略 歴 】

           
1990 松崎町地場産品コンクールで「いづこいし」最優秀賞
1995 松崎町ビジネスコンクール2位
2001 松崎社会福祉協議会理事(副会長)
2007 高齢者の福祉事業として「ものづくり介護」を提案
手作りの店「ゆめのはな」開業
2008 松崎社会福祉協議会理事(会長)
2010 「伊豆・松崎・であい村 蔵ら」開業。
ワーカーズ・コレクティブ24名で設立

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