教習所が地域活性化の場に
教習所で指導員をしていると言うと、「変わった職業に就いたね」とよく言われます。確かに、現在勤めている自動車学校では女性の指導員は私を含めて2名。県全体を見ても女性の割合は少なめなんです。ですが、仕事をしていると毎日気づけば夜、ということが日常で、一日があっという間に過ぎてしまうほど充実しているんですよ。
この仕事について興味を持ったきっかけは、大学2年生の夏に通った教習所で、女性の指導員の方に出会ったことです。初めての運転で緊張する私にとても丁寧に指導して頂き、おかげで割とスムーズに免許取得ができました。教習中は先生の顔だったのですが、実はとても気さくな方で、プライベートでも食事に行くほど仲良くさせていただいたんです。年齢が私と近かったこともあり、「こういう仕事もあるんだ」と具体的にイメージできたのを覚えています。
とはいえ、大学では地域政策、環境、福祉などの社会問題について学んでいたんです。現場に足を運んで、地域の現状を掘り下げることに魅力を感じていました。地元の方と直接お会いし話を伺うことで、座学では学べないことを勉強したかったんです。一般的にイメージする教習指導員の仕事とはあまり結びつきませんよね? 正直に言うと、私自身も就職するまでは、仕事内容と大学で勉強したことと関連があるとは思いませんでした。ですが、地域に密着して人々と交流し問題解決に貢献できる点で、教習所での仕事が当時の希望とリンクする部分が多々あったんです。これはうれしい発見でしたね。
街路灯設置の募金イベントを開催
現在勤めている自動車学校では、交通安全講習や街頭指導、企業講習を行ったりと、地域の方と接する機会が豊富なんです。近隣の保育園児をお招きして講習を行ったときには、横断歩道の渡り方を指導したり、自動車の危険性について教えてあげたりと楽しかったですね。後日、お礼に私の似顔絵を描いて送ってくれた子もいるんですよ。
また、毎年「Do Light!フェスタ」というイベントも行っています。これは、当校に隣接する道路に、太陽光発電式の街路灯を設置したいというのが目的なんです。
近隣には中学や高校が集中しており通学路にもなっているのですが、夜は街路灯がなく真っ暗で危ないねという話が出て、企画したのが始まりです。近所の方に集まっていただき楽しんでいただければと、職員みんなで様々な案を出し合いました。当日は、コース場いっぱいに飲食店やフリーマーケットを出店していただいたほか、地元チームのよさこい演舞、高校のチアリーディング部によるチアダンス披露と様々な催しを行い、2800名以上の方にお越しいただきました。来場者のみなさま、出店していただいた飲食関係などのみなさまからは、1日で30万円近くの募金が寄せられ、おかげで先日、当校職員、地元の企業、高校生の方々と一緒に新たな街路灯を無事設置することができたんです。本当にさまざまな方にご協力いただき、年々規模と輪が大きくなっていることは本当にありがたいですね。
地域の交通安全のために丁寧なサービスを
現在の主な仕事は、教習所内での技能教習になります。まだ経験が浅い私ですが、すでに数えきれないほどたくさんの生徒さんと接する機会を頂いています。一人一人、うまくいかない点があれば一つでも見つけ出すように努力し、直してあげられればと思っています。指導したことが伝わると、「よっしゃー、できたぞ」という顔を生徒さんがするんです。逆に、難しい顔、分らなそうな顔をしていることもあり、そのときは「あ、今自分の言ったことは伝わってないな」と手に取るように分かります。そういうときはまだまだだと実感しますね。もっといい表現や指導パターンを自分なりに見出していかなければ、と日々勉強しています。
職場では、社長や管理者を始め、常に地域との関係を大切にしている点にとても共感しています。教習所は運転を教える場であり、私たち指導員は「先生」と呼ばれます。ですが、あくまで接客業だという認識で、サービスを第一に考えることが重要だということも学びました。近隣の方々が集まる場ですから、地域に密着したサービスを提供することが大事なんです。こちらでは、分らないことがあればいつでも先輩に教えて頂ける環境があります。もう一人の女性指導員の先輩は、たとえば、身長が低い生徒さんには座席に座った際に座布団を敷いてさし上げるなどの気遣いをされていらっしゃいます。そんな女性ならではの視点を私も持ちたいと思いますね。私は今年からは学科教習を担当する他、今後は場外での教習指導も行っていきたいと思っています。運転は命にかかわることですから責任を持って指導を行っていきたいです。そして、交通事故が少しでも減ればいいですね。いつかは、この先生がいるからこの学校を選んだ、と言って頂けるような指導員になれればと思っています。
取材日:2011.1