「パソコンわかばくらぶ」はシニアパソコン教室の先駆け
2000年、パソコンが急激に広まり、パソコン教室がいっせいに始まっていましたが、若い人向きという感覚があって、シニアは置いていかれていました。私は県立大学大学院生で、何かしたいと思っていたところでしたので、「これだ。シニア支援のパソコン教室をやろう」と、後輩と2人で話したのがきっかけになりました。静岡市視聴覚センターに話を持ち込んだら「地元の学生さんがそういうなら」と言ってもらい、一緒に始めることに。
7月に「パソコンわかばくらぶ」を立ち上げて、1回目の講座は翌8月。3倍くらいの応募者がありました。シニアの講座が開かれていないと、遠くは御殿場や浜松から来た人もいたほどでした。当時は目新しい講座でしたね。
60歳以上の人が対象です。同じことを何度も聞かれるので根気がいります。子どもと同じようなので、なるべくほめてあげることによって、自分もできるのだ、やって楽しいという気持ちになってもらうようにしています。テキストを作るときは特に気を遣い、シニアにあったように字を大きくするとか、絵をたくさん入れるとか工夫しています。「テキストがわかりやすかったから、講座もよくわかった」と、満足度がアップ。
80代半ばで初めてパソコンに触る人もいらっしゃいますよ。指先が思うように動かないので、最初はマウスの操作から。また、聞きなれない言葉や英語が多いので、お年を召したかたには難しいところもあります。また、お嬢さんをびっくりさせたくて、年賀状を半年かかって作った人もいて、みなさん本当にがんばってらっしゃいます。続ける、努力をするってすごく大事なことです。応援していてよかった!
高校生を巻き込んでお互いに刺激しあう
みなさんが純粋にパソコンに励んでいる姿から刺激をもらいます。すごく熱心です。講座が始まる30分以上も前からやってきて、復習したりわからなかったことの質問をしたり、そのパワーに元気づけられる毎日です。「忘れないうちに復習してね。やらないとドンドン忘れますよ」というと、素直に、まじめに復習をしてきてくださいます。私も忘れないようにしないと、シニアに負けてはいけないと思います。そう思っているからでしょうね、10年も続いているのは。刺激をもらったりやりがいがあるので、続けられています。
シニアとのおつきあいは楽しいです。講座をやったあとに「よくわかったよ、ありがとう」「ちょっと上達できた」「ここにきたら、よくわかった」など、小さなことですが感謝の気持ちを数多くいただきます。小さな喜びですけど、積もると大きいですよ。私も楽しいから、みなさんにも自信をもって楽しくやってもらうよう、努めています。
静岡市西部生涯学習センターの「西部パソコンサロン」は、近所の静岡商業高校の電子計算機部の生徒さんが、課外授業として月1回お手伝いをしてくれています。高校生が入ると、シニアの反応が全然違いますね。「地元の高校生が教えてくれる」と、とっても喜ばれます。ちょうど甲子園に出場していたり、卒業生の方がいたりすると、会話はさらに進みアットホームな雰囲気になります。高校生も、ふだんは接する機会のない年代の方なので、勉強になります。
また、パソコン相談で大変なことは、相手の困っていることを聞き出して、自分なりに内容を消化しながら教えるということです。そこには、コミュニケーション能力やプレゼンテーション能力が求められます。最初はシニアが「何を言っているのかわからない」状態だった高校生が、だんだん「喜んで帰ってくれてうれしい」というようになってきます。それを聞く私もうれしくなりますね。市民にも高校生にも刺激になっています。
生徒さん、サポーターさん、募集中
パソコン教室を始めて3カ月目に、一緒に立ち上げた後輩が「忙しくてできない」と離脱しました。どうしようと思いましたが、「続けられるところまでやってみよう!」。そして、10年経ちました。私1人ですので、お手伝いしてくださるサポーターさんにとても助けられています。パソコンを楽しみたいというシニアの生徒さんを増やして、その中から、サポーターになってくださるかたを発掘しながら育成をしていきたいです。組織ももっと大きくして、地域に浸透させていきたいと思っています。
さらに、地域と密着して異世代交流もふくめながらやっていけるといいですね。10年前、私自身が地元の大学生だということで、支持いただいた部分がありますので、地元の人との繋がりや年代の違う人とのふれあい大切だと思います。
世代間交流、地域交流に少しでも貢献できれば、と思います。
取材日:2010.11