子ども中心の保育を心がける
ずっと一緒にくっついていた、3人目の子どもが幼稚園に入って手が離れたら、体が裂かれるようにつらくて、体調をくずしてしまいました。あ、私は本当に子どもが好きなのだと気がついて、3年計画で保育士の勉強を始め、40歳で資格を取得しました。
資格を取って、子どもに関することをしたいとうずうずした気持ちで過ごしていたら、静岡市女性会館アイセルができたばかりで保育スタッフを募集していたのですね。1992年、アイセルの保育スタッフになりました。当時、会館企画に参加する人以外は保育を利用できませんでした。そこで、1999年、会館企画以外でも一時保育を利用したいという希望に応えたいと、独自の自主グループとして「保育支援グループすわん」を立ち上げました。
「すわん」は出張の一時保育を行っています。短時間の、その日限りの保育です。初対面の子どもたちばかりですし、その子どもとの関係を後から修正できません。また、保育をする場所が汚かったり、その部屋に手洗いやトイレがなくて外部を利用すると連れ去られるおそれがあったり、危険がいっぱいです。不安の中で行うので、短時間でも「子ども中心」「子どもの立場に立って」「初めての場所でも楽しく安全に過ごせるように」という理念を持って行っています。
子どもがすごく好きですね。いつも、保育の前は胃がおかしくなるくらいに緊張します、責任が重いので。いまでもそうですよ。でも、子どもに会うと忘れてしまいますね。子どもの力ってすごいです。
「ばあば」と呼ばれるうれしさ
拓ちゃんという、私にとってとても大切な子がいます。2002年、生後5カ月のフニャフニャの赤ちゃんで、ファミリーサポートをしていた私のところにやってきました。小さくて、かわいくて。2歳半で引っ越していくまでの短い間でしたが、よく預かりましたし、お母さんも一緒に過ごすことがたびたびでした。いま、小学3年ですが、埼玉から泊まりにやってきます。「ばあば、来たよ」って。私、本物のばあばになったみたいですよ。それだけ密につながっています。
ほかにも私のことを「ばあば」と呼ぶ子がいます。みんな、お母さんの心配りがいいのだと思います。上手に中に入ってとりもってくれます。だから、子どもとも、お母さんともいい関係が築かれていくのです。保育をしていて、心からよかったと思えるときですね。
また、一時保育のときにこんなことがありました。3歳の女の子が泣きじゃくって。そのうちに、涙出しながらも笑って「もう泣かない。がんばる」っていうのですよ。「そんなにがんばらなくてもいいのに」と、思わず私も涙が。「お母さんもうすぐ帰ってくるから、泣かないよ」って、小さい心でいろいろなものを見て、考えているのです。その心を大事にしなくては、と思います。
小さな胸のうちにさまざまな思いがつまる
子育てで、いちばん信頼しあえるのは家族だと思っています。その家族の子育てが上手にいくように、私たちは応援団だという形はくずさない、介入しない。そこを大事にし、目の前にきてくれた子どもと接したいと思います。また、ここまで来られない人を、来られるようにしたいです。口コミで、「すわんがいるよ」って聞いて出てきてくれればいいなあ。「すわん」が自然に浸透していけばいいのです。
障がいのある小学生から中学生の子たちの学童保育もさせてもらっています。その子たちが将来楽しく過ごせれば、と思います。
一時保育、障害児の学童保育と「すわん」の活動も広がってきました。私たちのように、子ども中心にみてくれる応援団がいっぱいできるといいですね。
いま、自宅が事務局なので、息をぬける所がありません。拠点となる場所がほしいですね。経費削減のために事務関係は夫がやっていますし、スタッフには謝金をあげたいです。運営資金が今後の課題です。
気軽に赤ちゃんを連れて、親子で駆け込める場所があればいいですね。育児に関する話などをして、親子と寄り添って、一緒に考えて、いい方法を模索していきたいのです。
子どもって、純粋です。感性の中で、小さい胸の中で、いろいろなことを考えています。子どもなりに大人を見つめています。私、子どもに逆に見守られているのではないか、と思うときがありますよ。「子どもはしっかり大人を見ている」って思わないといけません。子どもってすごいな、と思います。
取材日:2010.11