さくや姫プロジェクト|トップページ

本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

自分ひとりではなく、馬とともにあるスポーツ。
「相手を思いやる気持ち」で世界に挑む。

桜井亜須歌(さくらい・あすか)

桜井亜須歌(さくらい・あすか)



乗馬選手


- WEBサイト -

つま恋乗馬倶楽部

常に馬とともにある

 乗馬は、健康のため、あるいは趣味で、と人によっていろいろな楽しみ方がありますが、その一つに「馬術」という競技があります。私がやっているのは「馬場馬術」。歩行の正確さや頭の位置などで演技が採点されます。ちょうどフィギュアスケートのような感じというと分かりやすいでしょうか。

 両親が乗馬をしていたため、幼いころから乗馬に親しんできました。初めて大きなタイトルを取ったのは21歳のときの「全日本ジュニア大会」。中学生ぐらいから22歳まで出場できる(当時)もので、本格的に乗馬に取り組むその年頃の選手にとって、一つの目標でもある大会です。

 馬術は、普通の部活動とは少し違って、毎日学校が終わったら練習、ということが難しいスポーツです。馬を連れて帰るわけにはいきませんから。その上、馬は生き物なので、世話や手入れをしなければなりません。自分がお世話をしてあげなきゃ、という気持ちは、子供のころから子供ながらに思っていたことで、興味が出始めると、やはり馬が大切になってきます。大切なものを世話をしてあげなきゃいけない、毎日会わないと気がすまなくなるんですね。子供が犬を飼うと、毎日犬がいないと淋しくなる、そんな感じです。

 馬の寿命はだいたい20代から30歳ぐらいまで。成長やそのときのニーズに合わせて馬を替えることもあります。だから本当は愛着が出ないようにしないといけないんです。もちろんある程度のパートナーシップは大切ですが、選手として向上していきたいなら、次のことに挑戦しなければいけない。ずっと同じ馬と同じことをやっていると成長できません。次に行くためには新しいパートナー…というふうに馬も替えていく。だから本当は、長く持っちゃいけないんですけれど…どうしても愛着は出てしまいますね。

忘れられない国体の思い出

 今までアジア大会を始めいくつも大きな大会に出場してきましたが、もっとも心に残っているのは2005年の岡山国体です。静岡県代表として出場したんですが、正直、私個人のことならむしろ辞退したかった。というのも、競技前に馬の体調が悪くなってしまったのです。

 夜に様子を見に行ったとき、おかしいと思って獣医師に診てもらったら、腸が詰まっている、と。馬の腸はかなり長いため、これが詰まるということは死ぬか生きるか、命に関わることなんです。でも静岡県はそれまで国体で「皇后杯」を何年も連続で取っていて、その記録がかかっていました。私は馬のことも考えて欠場の意思を監督にも伝えましたが、もし出られるならできれば出てほしい、と。出ようかどうか、最後まで迷いました。結局なんとか持ち直して出場し、結果として優勝できたわけですが、そのときは勝とうという欲よりも、馬のことだけが気がかりでした。

 馬は生き物なので、人間と同じで朝お腹が痛かったり熱が出たりすることもあります。乗ればすぐに分かりますし、走って調子がよくなることも、逆に無理して出ない方がいいこともあります。私たちは競技を一つの目標としているわけですから、コンディションを管理することが一番大事です。

 私はそういうところが乗馬の魅力だと感じています。馬とともに臨むから、自分だけの気持ちではどうにもならないんです。常に私よりも馬の体調などを優先して考えないといけない。それが、例えば子供にとっては優しさだったり相手を思いやったりする気持ちとして培われるんですね。自分が世話しないとご飯も食べられない相手を常に気遣うスポーツは、乗馬の他にはありません。

乗馬の楽しさを伝えたい

 これまでやめようと思ったことはないですが、相手が馬だから、逆に、自分ひとりでできればもっと楽だろうなと思ったことは、何度もあります。他のスポーツだったら、自分が気のすむまで練習すればいいこともあるけれど、私が夜中まで練習したら馬が傷みます。それって、この競技には存在しないことなんです。馬を連れ帰って夜中でも早朝でも、暑くても寒くても納得いくまで練習ができるわけですよね。でもそれができないから、そこで自分が我慢しないといけない。そういうときはあきらめて、次の日もう一度、と切り替えるようにしています。

 自分中心には行きません。自分が調子悪くても馬の運動はしなくてはならないけど、馬が調子が悪いときは我慢。難しいとこですがそれが辛いということにはなりません。子供のころからやっているので、そういうものだと思っています。

 今、乗馬人口は増えているし、大会、競技会も増えています。乗馬といえば少し敷居が高いと感じられる方が多いようですが、実際はそんなことはないんです。この「つま恋乗馬倶楽部」でも、3歳ぐらいの子供がポニーに触れるのを楽しんだり、年配のご夫婦で乗りに来られたりと、それぞれに合わせたスタイルで乗馬に親しむ方がいらっしゃいます。こういうふうに、もっと楽しみ方が広がってくればいいな、と。そのためには、ぜひ一度体験してほしいし、馬に会いに来てほしい。いろんな乗馬の楽しみ方をPRできるような活動もしていきたいと思っています。

取材日:2011.2



静岡県静岡市生まれ 掛川市在住


【 略 歴 】

     
1985 全日本Jr大会
1998 バンコクアジア大会出場
2005 岡山国体出場
2006 ドーハアジア大会出場
2010 広州アジア大会出場

一覧に戻る(TOPへ)