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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

発達障がいの子どもたちとの出会いが人生を変えた。
誰しもひとりではないことを伝えたい。

みずの・くみこ

みずの・くみこ



社団法人ぽっぷちゃいるど  理事長


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社団法人ぽっぷちゃいるど

「発達障がい」って!?

 まだ私が子どものころの話ですが、幼稚園の担任の先生が本当に優しくピアノも上手できれいだったんですね。そのうえ、私をとても可愛がってくれた。以来、この職業が自分にとって特別なものになっていたのです。20歳で幼稚園の教諭になりました。
 仕事は楽しかったですね。ただ、どういうわけか発達障がいの子ども達を担任することが多かったんです。いまでこそ、発達障がいという言葉は多くの方に知られるようになってきましたが、私が幼稚園の教諭としてはじめて彼らと出会ったころは、一種の禁句でした。でも、発達障がいの子どもたちは能力的に何かが劣っているというより「特性」が大きいのですね。逆に彼らならではのいいところもたくさんある。それを社会のなかで適切にのばしてあげられるかどうかが重要です。
 できたらこの子たちともっと深く関わりたい、そう考えていたころ、能力開発機構という、発達障がいの子どもたちも教育をする施設から声をかけていただきまして、そこに転職しました。でも、この施設での仕事がようやく軌道に乗りかけてきた頃、能力開発機構は経営上の理由で突然解散してしまったんです。それで、自分的にもこれからどうしようかと思いましたし、以前いた幼稚園から「戻ってきてもいいよ」なんて言っていただいていたりもしたのですが、周りを見渡してみたら、私以上に、子どもの親たちが本当に困っていた。発達障がいの子どもたちに対して専門で特化した施設は他にはありませんでしたから。施設がなくなってしまったら、どこへも行く場所がないんです。それなら仕方ない、私がやるしかないのかな、と。そうして、親たちの要望をきっかけにはじめたのが、このぽっぷちゃいるどです。

必要としてくださる人達がいるからやる

 野心とか独立心とか、そういう意識はまったくありませんでしたね。私の親も勤め人だったので、どこかに勤めて働くというスタイルが自然で、職場でも可愛がってもらっていましたし、仕事も毎日充実していました。しかし子どもとその親たちが困っている、だからどうにかしたい。それが唯一の動機でした。はじめてしまった以上、やるしかないのですが、最初は生徒数が30人いたかどうかくらいなので、運営は超赤字でした。しかし、経営を優先して結果に即効性を求めると、子どもたちに弊害が出ることが多いのです。ですのでじっくり環境づくりも含めてやって行く事が不可欠なのです。
 一方、最近はどうしても合理性、効率性優先の世の中になっていますよね。例えば、夜遅くまで空いているスーパーやコンビニがあり、それで夜中にお母さんが子どもを連れて買い物に出かけたりする。24時間の保育園とかも、いけないわけじゃないですけど、環境があるとやっぱり利用してしまいますよね。昔はスーパーが閉まった後に「お醤油貸していただけますか?」という場面や、隣近所の方が「子ども見ていてあげるから用事済ませておいで。」とか「たまには息抜きしておいで。」の世界がありました。今はお金で解決してしまう場面が多くなりました。そして、その積み重ねにより地域のつながりも希薄になってしまった気がします。
 かつては地域のなかでそれぞれお互いの顔が見えていて、「最近見ないけど元気?」といったような会話も生まれて来ていたのだろうと思います。そして、結果的に地域ぐるみで子どもを育てて行くことになっていた。しかし関係性がなければ誰にも頼れません。頼れないから、お母さんも子どもも追いつめられて行くのです。子育てには、親だからできること、親だけではできないことがあります。私はプロとして、教育の中で、親ではできないことを担おうと思ってこの仕事をしています。地域も教育も親も、すべてがつながっていってこそ、子供ども達は健やかに育つんだなと実感しています。

自己受容の大切さ実感「気づきカフェ」

 いま「子育て気づきカフェ」という体験型研修をやっています。人と人とのつながりが希薄になってしまったぶん、親たちも子育ての際、誰にも相談できなかったりする場合も多くなりで、どうしてももんもんとしてしまったりしがちです。また、特に女性は結婚して名字が変わるひとが多くて、誰々家の嫁になり、誰々の奥さんになり、誰々のお母さんになるということで、悪気なしに自分がどんどんなくなって行ってしまうということが少なくありません。しかもそれに本人はなかなか気づけずにいる。「気づきカフェ」では、文字通りそういったことに気づく機会を作っています。自分も大切に、つながりを大切に、ということに気づくと、ひとりでがんばりすぎなくていいんだなっていうことに気づけたりする。親が変わると子どもが変わります。子どもはすぐに大きくなってしまうので、親と子、同時進行でやっているわけです。
 この「気づきカフェ」は、つまるところ人間関係における”気づき”の体験型研修なので、子育て以外にも多くの局面で応用することが可能です。思春期の子ども達や企業における上司と部下の関係だとか、さまざまなフレームに対応した「気づきカフェ」を行っています。南は九州、北は東北まで、全国で呼んでいただいて実施させてもらっています。
 最後に夢を挙げるとしたら、絵本をつくることなんですよ。昔から、私自身、絵本が大好きでした。絵本って、読み手によって受け取り方が本当に様々ですよね。自分で自分のことを気づいてもらうためのひとつの極限だと思っています。
 作りたい絵本の内容は、とにかく、安心感を感じられるもの。失敗しても、どんなあなたでも、私はあなたを愛しています、ひとりじゃないよっていうことを、心を込めて伝えたいですね。それができれば、例えば絵本を通して夫婦間、親子間での愛情が伝わればとんでもない犯罪とか、が、こんなに増えたりしないと思います。スキンシップが加われば最高ですね。 私は、いつも人間関係が温かく豊かな世の中になって欲しいと願っています。

取材日:2011.1



大阪市生まれ 静岡県浜松市在住


【 略 歴 】

1985 幼稚園教諭をするなかで発達障がいのある子どもたちと出会う
1996 「子ども総合サポート・ポップチャイルド」設立
2000 浜松こども館企画運営委員 就任
2006 はままつ産業創造センター起業家精神啓発事業 講師
静岡県警察協議会委員 就任(~2009)
2007 浜松商工会議所青年部会長 就任
日商青年部主催ビジネスコンテスト「気づき自己受容プログラム」準グランプリ受賞
2008 日本商工会議所青年部委員長 就任
野村総研研修事業で講師を務める
2009 「社団法人ぽっぷちゃいるど」に移行
浜松市立双葉小学校評議員 就任
2011 日本商工会議所青年部副会長 就任
浜松市文化振興財団評議員 就任

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