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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

ランジェリーのパターンを作る、大好きな仕事。
現場の声を商品に反映できることがやりがいに。

大村佳奈子(おおむら・かなこ)

大村佳奈子(おおむら・かなこ)



トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社
マーケティング本部 商品開発管理部 技術設計課


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トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社

「死ぬまでやります!」とトリンプに入社

 手作りのバッグで通学したり、学校のスリッパにビーズやスパンコールをつけてデコレーションしたりと、元々手作業が好きでした。高校時代には友達と一緒に派手な洋服を作って着たりもして。周囲にはあまりそういうことをしている人はいなかったので少し目立っていたかもしれませんね。理系だったので周りからは反対されたのですが、卒業後は服飾の勉強がしたいと思い、ファッションデザインの専門学校に進学しました。

 専門学校では、デザインと縫製などの技術を基礎から学びました。思い出深いのは卒業制作時にファッションショーを行ったこと。帆布素材のワンピースを作ったのですが、首回りや袖などにレースをあしらったことで、帆布の硬い素材感が和らげられて、我ながら大満足の出来でした。「ショーでは見えないけれど、細部もすごいかわいいんだぞ」と思っていましたね。その過程で、レースという素材もどんどん好きになったんです。気づいたら、洋服そのものよりもマテリアルに興味を持つようになっていました。

 ですから、学校の先生にトリンプを勧めていただいたときにも、「あ、レースをいっぱい使う会社だ」と思いましたね。入社試験ではやる気を尋ねられ、「死ぬまでやります!」と言ったんです(笑)それで無事入社したのですが、女性とはいえブラジャーの仕組みなんて分かりませんよね。だから、まずはほどくことから始めました。解体しながら、どんな素材が使われているか、パーツがいくつあるか、縫製の順番はどうなっているか、ひとつずつ確かめていったんです。それで分かったのは、洋服とはまったく違うということ。パーツが多く重ねる作業が多いし、サイズも小さい。縫製も、専用のものを使うのでとても難しいんです。当時は未熟さを感じる日々でした。

好きな仕事のはずが、迷いが生まれる

 まず経験したのは、マスターサイズというブラジャーの基本となる型を作るパタンナー職です。学生時代はパターンを起こすことは苦手だったので不安もありました。ですが、ブラジャーに関しては、楽しいなと思えたんです。元々数字が好きだったので、1ミリ以下の誤差にもこだわる点、フィッティング後の修正指示が明確なのもしっくりときて。計算して頭に描いたものが形になるのは気持ちよかったですね。

 現在のCAD職に異動になったのは入社3年目。CADソフトを使用して、マスターサイズからサイズ展開用のパターンを起こすグレーディングが仕事です。それが生産用のパターンとなり、工場に送られる前の最終過程になるので重い責任があります。その後の修正や遅れは絶対に許されませんから。この仕事は、割合の計算をするなど数学的な要素もあるのですが、どちらかというと感覚が勝負。線をみて正しいかどうか、ラインはきれいに並んでいるかを判断する力が必要とされるんです。経験も必要ですね。最初は見えなかったラインがだんだんと見えてくるんです。今、異動時のことを思い返すと、困ったことは記憶にないですね。たぶんスムーズに入り込めたのだと思います。とにかく、毎日がすごく楽しかった。それまでマスターサイズを作っていて、その後はどうなるんだろうと気になっていましたし。パソコンを使ってパターンを引くのは効率がよく、より正確に仕事ができる点も魅力的でした。

 ですが、ある日上司に「お前、スランプだな」と言われたんです。昨年のことなのですが、実は私の中で迷いが生まれていて。大きな会社のコマになって動いていて、自分がどこにいるのかを見失ってしまったんです。自分のやっていることは何なんだろう。何のためにやっているのか。私がしたことで誰か喜んでくれているのか……。作ったものを排出する一方で、周りが見えなくなっていました。ランジェリーは、お店で並んでいるものを見れば華やかですが、表に出るまではとても地味で、緻密な作業の積み重ねなんです。何となく元気がなくなった私を見て、上司は気づいたんでしょうね。見透かされて、本当に悔しかった。この仕事は好きだし、レースも好きだし、どうしたんだろうと考えながら、とにかく色んな方向に目を向け、もがいてみることにしたんです。

店舗の声から、仕事のやりがいを再確認

 まずは、原点に戻ることを考えました。作りたい型を起こし、フィッティングに回すという作業をもう一度やりたいと思ったんです。そこで、本社で新たな企画が動くときに手を挙げ、参加させてもらうことにしました。本業務と異なることでも、社内ではやりたいと思うことを職種の垣根を越え自由にやらせてもらえる環境があったんです。おかげで、本社の人たちが何を思っているか、どれだけ熱い気持ちを持って仕事をしているかに触れ、自分の業務を見直すことができたんです。

「セッション」と呼ばれる、各地の優良店の店長が集まる会議にも参加しました。店舗と直接かかわる部署ではないのですが、希望するなら行ってもいいよ、と言ってもらえたんです。セッションは、すごく楽しかったですね。ばんばん意見が出て。こんな点が足りない、こういう商品が欲しいという声もたくさん聞けました。そして、ある店長さんから、私たちが開発したパターンのフィッティングが、どのサイズも他のものに比べてとてもいい、と言っていただいたんです。そのときは、マスターサイズ以外のサイズにもグレーディングできちんと反映できていると確認でき、とても安心しましたね。待ってくれている人がいると思えました。自分の仕事は、お客様の声に応えることができる仕事なんだと思えて、そこから変わることができたんです。それからも色んな店舗を回り、答えは現場にある、現場の声を拾い上げてそこからどれだけいいものを作れるかが大事だと実感することができました。

 現在は、優待セールのDMデザインも任せてもらっているんです。下着の写真では受け取る側に抵抗があるから、何か違うものをと求められ、ブラジャー型のクッキーを焼いて並べたり。社内の色々な人たちとかかわって好きなことができるので楽しいですよ。その他にも、ISO14001のメンバーとして、環境に優しい会社を目指して活動しています。身近な問題として、これからも積極的に取り組んでいきたいですね。本業務についても、CADをもっと多くの場に導入したほうがより仕事の効率や質が上がると思い、週1回、社内で研修を行うようになりました。サイズ展開の際も、女性の体形に合わせてより細かいルールを作ったほうがいいのではないかと考えているところなんです。また、今後は海外支社の人たちと連携することで知識を共有したり、技術を上げて行きたいと考えています。自分が様々な場で刺激を受けたことは、周りにも伝えていきたいですね。「どんどん外に出ていこう!」と課内のみんなが動いて、刺激を受けることでやる気が生まれる。それがきっといい商品を作ることに繋がっていくと信じているんです。

取材日:2011.1



静岡県島田市生まれ 島田市在住


【 略 歴 】

     
2002 トリンプ・インターナショナル・ジャパン株式会社入社
パタンナーとしてマスターサイズを担当
2004 CADソフトを使いマスターサイズから全サイズへパターンを展開するグレーダーへ転向
2007 本業のグレーダー業務の傍ら、07FW優待セールDMデザイン制作。
以降、継続的に担当する
2009 ISO14001メンバーに加入
09FW優待セールDMデザイン制作
2010 10SS/FW優待セールDMデザイン制作
現在、スタンダードブランド、Valisere、Pour moi、Triumph C’est ca、
AMO'S STYLEなどのアイテムのグレーディングを担当する

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