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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

フィルムコミッションで町おこし。
地元を見直し、町の魅力を再発見する。


ワクワクドキドキの活動

 21歳のとき、実家が負債を抱え、建て直しのために東京から沼津に帰ってきて、実家の魚仲買業を手伝っていましたが、借金があってなかなか厳しい状態でした。なんとかしなければ、町おこしをして経済貢献できないかと思い、沼津青年会議所の活動に参加をしてイベントの手法や経験を積みました。
 そのころ、沼津市出身の映画監督原田眞人さんの作品を上映し監督と知り合ったことが、「フィルム微助人」を作るきっかけとなりました。監督から、フィルムコミッションがアメリカで成果をあげている話を聞き、監督の作品でお試しコミッションをさせてもらいました。
 青年会議所でいろいろ勉強して、じゃあ、私にできることは何だろうと思ったとき、原田監督から聞いたフィルムコミッションだと思いました。なぜかと言うと、まず、初期投資がいりません。それから、フィルムコミッションが沼津市だけで完結しないで三島や静岡でもロケをすると、市境の垣根を越えざるを得ません。これは、いろいろな立場の主張の垣根を越えられる事業です。また、能力のある人が役に立っていないのはもったいない。このフィルムコミッションは、町のことを知っている住民のプロが必要なのです。行政の、観光や文化や教育といった区分の垣根も、乗り越える必要があります。それら全部を繋げて集結できるということが、フィルムコミッションだと思ったのです。
 撮影で建物風景以外に方言を喋るおじさんが活躍すれば、それは、その地域の魅力再発見です。地域力は潜在的にありますが、脚光を浴びせてあげないと現れてきません。方言を喋るおじさんがいるということを、映画館に撮影の裏話みたいなものを書いて張り出す、マスコミ各社に流すなどして、テレビロケに使った素材の1つ1つに光を当て、地域に還元していきたいです。地域住民がかかわることでスポットライトが当たります。だから、フィルムコミッションはワクワクドキドキする活動なのです。

エキストラは町の「語り部」

 フィルムコミッションは、町づくりのプロでなくてもかかわれますので、興味を持ってもらう機会を作っています。エキストラは全国から撮影現場にやって来ます。役者見たさに。全国から沼津にやって来られると、経済効果あり。それだけではありません。地元の人には「たくさんの人がバスに乗っているけど、何があるの?」という、ワクワク感が高まります。また、エキストラ同士では友達ができるし、新しい知識も増えます。
 2002年に放送されたTBSのドラマ「夢のカリフォルニア」は、大瀬崎でロケがありました。主演は堂本剛。朝6時という早い時間にエキストラがやって来るのは、堂本剛に会いたい、テレビに出たいため。出番までずっと待っていると「海ってきれい」「富士山もきれい」と、自然が感じられてきます。ダイバーが平日でも多いなあと、地域を再発見します。そして、番組がクランクアップすると、「私出ているから、見て」と知り合いに電話をします。堂本剛見たさに、ドラマのエキストラで大瀬崎へ行ったら、景色がきれいで…と。こうして広がる波及効果は、町のPRになります。エキストラは町のことを語りつぐ「語り部」です。
 製作者とロケ地の店が直に撮影などのやりとりをすると、店だけで広がっていきません。ところが、商売のためではない、撮影のためだという気持ちが店の人に芽生えると、「こんな店もあるけど、どうですか」と他店も紹介するようになります。このような町おこしのためにフィルムコミッションがあって、それによって町が活性化していけばいいと思っています。

地域力をつけて魅力を発信

 このような活動をしている源は「怒り」です。私がこれをやることによって自分自身への見返りは、全くありません。私の子供がUターンして帰ってきたとき、「いい町だ」と言ってくれる何十年後かを夢にみています。
 この活動が、地域主導の町おこしをする有効な手段だということを、試して、実践して、成果を得て、10年経ちました。フィルムコミッションの先駆けですが、参加しない人にもわかるような効果を見せないといけない、というのが次の課題です。
 また、活性化したという評価や10年間の活動があったので、市長も認めてくださって臨時職員を2人も雇ってもらえました。そのおかげで、ロケ本数が4倍に増えました。年間16本がこの4月から半年で30本近くに。ただ、本数が多ければいいということではありません。1つの作品を有効活用しなければいけない。例えば「冬のソナタ」で言えば、違う国の人がツアーを組んで行く、韓国語や韓国料理を学ぼうと、文化がセットで付いてきます。たかだか映画1本でよくも観光や経済や産業、さらに文化までを学ばせています。
 総合芸術の中にフィルムコミッションが入ることによって、地域の魅力を切り取って取り上げることは、総合芸術の中に参画できていることです。ロケ地だけが参画しても意味がありません。そこに、文化・生活様式・風習・行事などが入っていないと。「冬のソナタ」がよかったのは、そこに韓国ならではの文化が盛り込まれているからです。
 そういう作品を誘致することもさることながら、そういう作品に恵まれるということは、こちらの地域の力も試されています。ここにしかないものを発掘していかなくては。

さぁ来い、ハリウッド!

「ローマの休日」を観てローマへ行く人が多くいますが、それと同じように、静岡でおでんを食べて、浜松で凧を揚げるのがステータスだと海外の人に伝えたいというのが夢です。地域に誇りを持っています、と言えるようになりたいです。また、地域名だけで憧れるというのは、映像の先入観です。例えば、飛行機の中で知らない外国人と、「富士山のある静岡に住んでいます」「あ、富士山と言えば、あの映画を見て行きたいと思っていたんだよ」というように、富士山を介して会話が繋がっていくといいです。そうできるということは、静岡はそういうものを受け入れられる総合的な力がある、ということです。
 イタリアは街中の建物がオレンジ色で、花をいっぱい植えて景観に配慮しているのは、町の条例で決まっているからで、観光という視点に向かって一気に進んでいます。景観は、人の視点で違いますが、ロケという切り口ではどうか。例えば、富士市大渕の茶畑から見る富士山の景観がいいのは、住民が防霜ファンを立てないで景観を守っているからです。
 このように、ロケに景観は切っても切れないものです。そこの景観を守ろうとするとき、コストのかからないフィルムコミッションが、そのスポットに脚光を浴びせることによって、古い蔵を守りたかったら、フィルムコミッションの介在によってカメラが入り、注目を集めたことから蔵が存続し続ける、というような成果が目に見える形で現れて、評価されるといいです。
 海外からの撮影誘致を考えて、ハリプロ映像協会を立ち上げました。ハリウッドは国際配給級映画の代名詞ですので、「さぁ来い、ハリウッド!」、静岡へ。

取材日:2010.11



静岡県沼津市生まれ 沼津市在住


【 略 歴 】

     
1992 沼津に帰り、魚仲買業三虎水産経営
1999 社団法人沼津青年会議所理事
2000〜2001 沼津港活性化研究会アメニティー部門
2001 「めざせ!沼津フィルムコミッション」設立
2002 フィルム微助人設立
2004 NPO法人取得
2005〜2007 NPO法人まちづくりセンターぬまづ理事
2005〜2009 静岡国民文化祭基本構想検討委員会・起草委員会 各委員
2009 さあ来い、ハリウッド!大作戦 ロケでまちが元気になるプロジェクト 企画・運営
2010 ハリプロ映像協会設立

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