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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

消防団の中に女性隊のレールを敷くことが、
「いざというとき」の力を育てる。

木村秀子(きむら・ひでこ)

木村秀子(きむら・ひでこ)



藤枝市消防団 本部分団長
藤枝市消防団 広報部長
志太支部女性消防団員連絡会会長



応急手当を中心に活動中

 今、藤枝市消防団の女性隊員は13名。他にラッパ隊3名、私が本部付けで、合計17名です。おもに応急手当の講習を開いたり、春の火災予防運動等で街頭運動をしたりします。全国的に機能別消防隊員――普段は会社員で、勤め先で消防団活動をするといった特別な消防団員の形ができ始め、藤枝市消防団の女性隊は男女共同参画の流れで平成11年に結成されました。 私は消防団に興味はなかったのですが、近所の消防団員の方に勧められたこと、そして私自身登山が趣味だったので「応急手当を学べれば」程度の軽い気持ちで入りました。
 でも当時はまだ、女性隊の活動内容は具体的には決まっておらず、「コンパニオンがわりだ」と言われたり、女性隊は火事現場に出ないことが決まると「火を消さない消防団はいない」と消防団内からも批判が出ました。そんな中でも「幼年消防大会」の手伝いなど、署が、女性隊が外に出る機会を作ってくれたのは、ありがたかったですね。
 特に応急手当に関しては、救急隊の方が女性隊に声をかけてくれたので、スムーズに活動が始まり、私たちも初代隊員として努力しました。例えば、応急手当に行った先で質問されて困ったら、全部フィードバックし、そのつど救急隊に質問して教えてもらいました。そうして問題や情報を共有し、平等に活動できるようにしたんです。そのおかげで応急に関してはレベルアップでき、活動が固定できたと思います。

「女性隊を軌道に乗せる」ための努力

 入隊当初、当時の副団長に「名前を汚すことをしてくれるな」と言われていました。
 だから私自身も、最初のレールを敷くのは発足当初のメンバーの仕事、軌道に乗せなきゃいけない、という気持ちが強かったですね。
 5年目に私が分団長になりますが、メンバーをまとめていくことにかなりエネルギーを使いました。感じたのは、女性は縦の系列を作るのが苦手だということ。特にスタートラインが同じだと、上下関係を受け入れられないんです。
 例えば会議で平の隊員が分団長に「もう時間だから終われば?」と言ってみたり、私たちは公務員の中で特別職として扱われていて、年報酬もいただいているのに「地震災害のとき、私には家族がいるので消防活動はやらない」と言い切る人がいたり。もちろん家族は大事だから、家族の安全が確保できたらその上で活動する、でいいと思うんです。女性隊の中でもそのあたりの意識にはかなり差がありました。
 私が努めたのは、少しずつ隊員を刺激して考えてもらうこと。人は他人が変えようと思っても変えられないから、自分が何をするべきかを、相手が気付くまで刺激する。最終的に自分自身が決定しない限り「やらされた」という気持ちしか残らないものです。だから私が防災指導員の講座を受けたとき、無駄にならないね、と翌年、別の隊員が受けてくれたんですが、こうして裾野が広がっていくのはとてもうれしいです。
 消防車輌での夜警に女性隊も出て行けるようにしたり、藤枝各地区の公民館まつりに制服姿で出て行って、女性隊を知ってもらえるようにしたけれど、結成して10年以上になるのに、未だに女性隊員っているの?と言われたりすると、軌道に乗っているんだろうかと少し疑問です。私たちはレールを引いたけれど、新たに入ってきた人は、そこを走ることでいっぱいになってしまう。物事を立ち上げるときより、継続するほうがパワーが必要になるんですね。

切り離せない「消防」と「防災」

 実は私、消防団を何度も投げ出そうとしているんです。女性隊に批判的な人に「女はダメだ、レベルが低い」と言われ続けたり、女性隊内部でも人材が育っていなかったりして、本当にくじけたことがありました。女性隊をよくしよう、発展させようと頑張ってきたけれど、じゃあどうすればいいのか、レベルが高くなるかが分からなかったんです。
 消防団から逃げたくて防災士の資格を取ったりヘルパーを取ったりもしましたが、それらが不思議と消防に関係してしまうんですよ。それで、とにかく自分にとって満足が行くようにしようと考えることにしました。藤枝市は消防と防災が別の管轄なんですが、防災の勉強をするにつけ、この二つは切り離せないという気持ちが強くなってきました。だから消防にしても防災にしても、自分の中で踏ん切りが付く程度に見極めようと。辛くて活動を休んでいた時期もありましたが、今は本部の女性隊担当ということで、女性隊を応援する立場にいます。
 基本的に消防団って「何でも屋」なんです。土建業からヘルパー、公務員、僧侶までいる。いざというとき何でもできる、と私は思います。女性隊も、それぞれの力や知識がうまく発揮できてまわっていけば一番ですね。

取材日:2010.12



静岡県藤枝市生まれ 藤枝市在住


【 略 歴 】

1999 女性隊発足に伴い入団
応急手当普及員認定を受け、指導を始める
2002 災害ボランティアコーディネーター研修
2003 女性隊分団長を拝命。地域防災指導員の研修を受講
2004 障害児学童保育に就労、障害者の防災について考え手話を学び始める
2005 分団長降任、視覚障害者ガイドヘルパーの資格取得
ガイドヘルパーボランティアに参加
静岡県防災士、日本防災士研修
2007 中越沖地震ボランティアに参加、災害時要援護者の対応を学ぶ
2008 ボランティア連絡協議会の災害時要支援者勉強会の講師を務める
2009 女性消防隊分団長を拝命
2010 本部分団長、広報部長、志太支部女性消防団員連絡会会長を拝命

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