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本サイトは、平成22年・23年の作成当時の内容です。

少子高齢時代でも「ゆったりした老後」を。
お金を中心にしたライフプランづくりをお手伝い。

安藤絵理(あんどう・えり)

安藤絵理(あんどう・えり)


ファイナンシャル・プランナー
安藤絵理FP事務所 代表


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安藤絵理FP事務所

バブル景気の終焉で一変した社会とお金の常識

 私は短大卒業後、1983年に銀行の保証会社に就職しました。融資を出すかどうかを審査する会社で、私は主に住宅ローンの審査をしていました。当時は「バブル景気」まっさかりで、銀行の融資も本当に甘い時代でした。先輩と審査をしながら、「この人にこんなに貸しちゃっていいんですかね」なんていうことも結構ありました。
 いわゆる「イケイケの時代」だったんです。審査する私たちも、窓口になっている銀行も、当然ながら借りる人も、土地の評価はまだまだ上がるという「土地神話」を信じていていました。ですから「大丈夫かな」と思いながらも「担保があるからいいか」と、どんどん貸し付けしていたんです。でも1989年12月29日の日経平均株価38,915円をピークに、翌年2月から株価は急落し、その後、不動産価格もどんどん下落をはじめ、バブルが崩壊して、結果的には返せなくなってしまった方がものすごくたくさん出てしまった。
 そんな時代から20年以上が過ぎて、気がつけば世の中の常識も随分変わりました。かつては、給料は年々上がり、定年まで仕事を全うしたらそれなりの退職金がもらえて、退職後は年金をもらいながら悠々自適……そういうものだと信じている人がほとんどでしたから、老後の心配をする人はあまりいませんでした。「ライフプラン」という言葉ひとつとっても、「数年先にこうなったらいいな」ということはさて置き、マネープランを含め、退職後の現実的な生活をしっかり考えている方は、本当に少なかった。でも今は違いますね。
 よく言われるように、今や日本は少子高齢社会です。それが年金や医療費、消費税といった問題にもつながっていて、日々の生活や私たちの人生設計にまで影響を及ぼしています。すべての人にとって暮らしにくい時代になってしまったと思いますね。日本は今後、現在の経済レベルを何とか維持しつつ、新聞などでも話題になる「格差社会」に直面していかなければなりません。そういう中で「老後もゆったり」という生活を実現するには、きちんとしたプランニングが必要だと思うんです。
 ファイナンシャル・プランナー(FP)は、老後に限らずお金の面からライフプランを実現するためのお手伝いをします。老後の生活設計とそれに向けた準備、さまざまな保険やローンの見直し、資産管理や運用などについて、新しい金融商品の情報なども提供しながら、あくまで中立的な立場で相談に応じます。FPと言うと日本ではちょっと前まで、お金持ちの方の資産運用や相続対策など、どちらかと言うと資産家向けというイメージが強かったのですが、実はさまざまな方の生活に密着した相談に応じるのが本来の役割なんです。

生活に密着したお金の相談で役に立ちたい

 私がFPの世界に入ったのは1991年。結婚を機に保証会社を退職しまして、たまたま求人広告で「静岡ファイナンシャルプランニング」という、設立されたばかりの会社に就職しました。当時はFPについて何も知りませんでしたが、求人募集の業務内容が、保証会社で感じてきた「こんなにどんどん貸していいのか」というわだかまりのような気持ちにひっかかって、何ができるかわかりませんでしたが、とりあえずやってみようと思ったんです。
 会社は社長を筆頭に私を含め社員が3人。社長自身が別の事業で財を築いた資産家で、お客様もほとんど資産家の方でした。入社2年目に「ファイナンシャル・プランナー2級(AFP)」、98年に「1級ファイナンシャル・プランナー(CFP))」、2002年に「DC(確定拠出年金)プランナー」の資格をとりまして、主に資産家向けのプランニングを作っていました。
 ちょうどその頃、郵便局が「暮らしの相談センター」というサービスを始めました。無料の税務相談や弁護士相談などの中にFPもあって、勤めていた会社が静岡のFP業務を受注して、私も相談窓口を務めることになりました。資産家の方々は、お金を増やさなくても生活に困ることは基本的にないのでしょうが、「相談センター」にいらっしゃるのは普通の家庭の主婦やお年寄りが大多数ですから、保険の見直しや住宅ローン、教育ローンなど、生活に密着した相談がほとんどでした。
 資産家のプランニングをつくる一方で、「相談センター」での相談に応じながら、「もしかしたら生活に近いFPのほうが、より多くのお客様の役に立てる仕事なんじゃないか」と思うようになりました。もちろん会社としては、資産家のお客様を相手にしているほうが収益が上がります。でも私は内心、「資産家であろうが一般のお客様であろうが、親身に相談に乗ってあげるべき」と思っていました。その辺りが独立を考えるようになったきっかけですね。
 もう1つ、こんな言い方は失礼にあたるかもしれませんが、金融商品については入社当時、社長から教わることばかりだったのですが、自分も勉強していくうちに「もっといろんなプランがあるのに」と感じる場面もありました。
 FPの実際のコンサルティングは、最新の金融商品や保険商品に対する知識が重要なカギで、お客様の要望に対し「こういう商品を活用すれば、こういうことが可能です」と、具体的に提示しないといけません。しかも次々新しい商品が出ますから、知識を日々更新していく必要があるんですね。さらに経済状況の変動や税制改革という大きな枠組みによって「こういうケースにはどっちのほうがいい」というのが、かなり頻繁に変わります。ですから常にアンテナを張って勉強してかないと、気がつけば「浦島太郎」ということになってしまいます。資格をもっているだけでコンサル業務はできないわけですね。
 FPとしてお客様の役に立ちたいという思いで、自分も必死で勉強しました。それは今も同じです。そういう中で自信がついてきたのでしょうね。だんだん会社の方針と自分の方向性にズレを感じるようになりました。

円満退職で独立することが必須の条件だった

 独立を考え始めたのは2000年頃。当初、夫は反対しましたね。「お金に困ってるわけじゃないんだから、別に会社勤めで給料をもらってればいいじゃない」と。でも、「私は自分が信じる方向性で仕事をしたい、お金の問題じゃない」と説得しました。夫が心配したのは、独立に伴うリスクだったんです。「万が一うまくいかなかった場合、借金抱えるようなことになっては困る」と言われました。話をすればわかってくれると最初から思っていましたが、首を縦に振ってくれるまで1年ぐらい、「自宅を事務所にしない」という条件で同意を得ました。
 ラッキーだったのは、独立を考え始めていた頃、SBSラジオにいる友人が、お金をテーマにした番組をやってみないかと声をかけてくれたんです。それで2001年10月から半年間、「へそくりマンボ」と番組にレギュラー出演させていただきました。ライフプランや資産運用についてリスナーの質問にお答えするのですが、ちょうど夕方の6時30分から30分間という、勤め帰りの人たちがクルマで聞ける時間帯でした。ラジオに出演したことが、FPとして自分の名前を広くしってもらうきっかけになりました。実際、番組のおかげで、いろんな企業の方からセミナー講師の依頼をいただきました。独立するには名前を知ってもらうことが第一歩、あとは一生懸命やっていれば、口コミで評判が広がって行くように思います。
 ラジオに出始めた当時は会社員でしたから、依頼をいただくたびに「個人的にやっていいでしょうか?」と社長の許可をもらって、少しずつ活動の幅を広げていきました。実は独立するとき、細心の注意を払ったのは「円満退職」だったんですね。同じ静岡市内ですし、狭い業界ですから、独立してから仕事をしていくうえでも円満退職することが絶対に必要でした。
 とはいえ社長は、私の考え方が会社の方針からずれていくことには気付いていたと思います。最終的には「そんなにやる気があるのなら自分でやってみればいいじゃない」という感じでした。その辺はかなり慎重に時機が来るのを待って、満を持して独立という形にせざるを得なかった。しかしおかげさまで2002年の年末に、本当に円満に退職できたんです。実は最初の半年間、適当な事務所が見つからなかったのですが、会社に「間借り」させてもらうことができました。そのくらい円満に退職できたんです。

お客様の信頼を得ることから仕事が始まる

 独立していちばん良かったと思うのは、お客様のご要望に応えられるまで、きめ細やかにコンサルティングできるところです。いちばん嬉しいのは、お客様と継続的にお付き合いできること。例えば最初は住宅ご購入のご相談、その何年か後に保険など別の相談でお電話下さるというお客様が多いです。また相談してくださるってことは、満足してくれたということかな、それなりに信頼してくださったということかな――そうと思うと、頑張った甲斐があるなと思います。
 お客様にしてみれば、他人である私にかなり細かく自分のお金や家族の話をするのは勇気がいると思うんです。なかには初めて相談に見えて「失礼ながら、あなたがどういう人か半分半信半疑で来ましたよ」と、率直におっしゃる方もいます。それはもっともだと思いますね。私としては、なるべくお客様が話しやすいよう気をつけていますし、お客様が話したくないことを無理やり聞くようなことがないよう注意しています。やはり信頼関係を築くことが第一ですね。
 「ファイナンシャル・プラン」という言葉は最近、身近なところでもかなり市民権を得てきているように思います。おかげさまで新規のお客様が最近かなり増えています。ちょっと前までお金の相談となると、銀行の窓口で無料でという方が多かったわけですが、私たちのように中立の立場の専門家に聞いてみようという人たちが、20~50代の若い層を中心に増えているようです。
 そうした中で私たちに求められているのは、よりトータルなプランニングですね。最初は保険の相談で見えられる方も、結果的には住宅購入、老後のプランまでと、より長いスパンでトータルにプランニングしてほしいというニーズも増えています。つまり、単に保険の掛け金が多い少ないという相談でなく、具体的にどういう保障が欲しいのか、運用であれば何のために増やしているのか、いつまでにいくらまで増やしたいのかという金額までお聞きして、具体的な商品やポートフォリオ化をご提案しています。

プランニングは一度立てたらおしまいではない

 さきほどもお話しましたが、金融商品や保険商品は次々新しいものが登場します。最新の商品情報や保険の分析などは、ネットやソフトを使って行える環境をつくっていまして、その辺にはかなりコストもかけています。でもネットだけではわからないことも多いんです。なので、東京に勉強しに行くこともしばしばですね。
 どんな資格もそうなのでしょうが、勉強すれば知識は身につきますけれど、それはあくまで「机上」の話で、知識をそれぞれのケースにあてはめていかないと本当の仕事にはなりません。お客様からいろんな質問を受けることで、初めて気付くことはいまだに多いですし、「普通」ということがないくらいプランは千差万別です。
よく仕事仲間とも話すのですが、FPは相談の数だけノウハウがたまっていく仕事です。逆の言い方をすると、1人ひとりのお客様にきちんと対応しないかぎり、ノウハウは蓄積されません。インプットとアウトプットの繰り返しが、さらにいい仕事へと結びついていくのだと思います。
 もう1つ気をつけていることは、お客様に対し情報を提供し続けるということです。先が読めない時代ですから、私がいいと思ってコンサルティングしたことが、例えばリーマンショックのような世の中の急変によって、再検討の必要性が出てくる可能性もあるわけです。そういうとき、「今こういう状況になっていますがどうしますか」という相談は必ずしましょうと申し上げています。
 これはFPの本にも書いてあることなのですが、プランニングは「1度立てたら、それでおしまい」ということではありません。お客様の家族状況も変わるし、世の中の動きもあります。いろいろな変化に対処できる体制が重要なんですね。
たとえは悪いかもしれませんが、かつてよくあった例として保険の営業員が、契約が欲しいときだけ「見直しませんか」とお客さんのところに行くわけです。契約のときも「見直しはいつでもできます」と言うわけですが、実際に何のフォローもしてこなかった。それがお客様の不信感に結びついていったのだと思うんです。
 いいときも悪いときも、少なくとも「今こういう状況です」という情報を提供して、プランの見直しそのものはお客様の判断に委ねる――そういう姿勢がFPに求められるのだと思います。

モチベーションを高く保ち続けるためのコツ

 最近、FPの数がものすごく増えています。ただし、独立して食べていくのはなかなか大変なようです。起業する方は皆そうだと思うのですが、皆さん自分の仕事をお金のためだけでなく、何より好きだからやっているんだと思うんです。よく起業仲間と話すのですが、「自分の会社を立ち上げるまでというのは、誰でも気合が入っていてモチベーションが高いけれど、本当に大変なのは何年も続いた後、毎年業績を上げていけるか、最低限でも業績が維持できるか」ということだと思うんです。モチベーションを保つことには、それなりの努力やコツが必要でしょうね。
 私は、普段はモチベーションが高いほうだと思いますけれど、時としてへこむこともあります。そんなときは、前向きに頑張っているFP仲間や起業仲間と話をするんです。話しているうちに「私も頑張らなきゃ」という気持ちになります。
 FPの仕事というのは、すぐに結果が出にくい仕事です。それでも相談しに来て下さったお客様が、私がコンサルしたことでいろいろな準備をなさって、20年後、もしくは30年
 後に「あそこで相談して良かったよね」と言ってもらえるような仕事がしたい――そう、いつも自分に言い聞かせています。

取材日:2010.12



静岡県静岡市生まれ 静岡市在住


【 略 歴 】

1983財団法人静岡県勤労者信用基金協会 入社
1991静岡ファイナンシャルプランニング株式会社 入社
2003安藤絵理FP事務所 開設
2009金融庁ならびに日本銀行より「金融知識普及功労者」として表彰

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