すべての仕事を体験した局アナ時代
中学時代、歌手の原田真二の大ファンで、コンサートのときミキサーをやれば彼に近づけると思い込み、ミキサーを覚えようと学校の放送部に入りました。文化祭のイベントのとき、放送部で司会をする人がいなくて、私がマイクを持ったら、「声がよく通る」とみんなが盛り上がってくれました。次第にミキサーよりしゃべるのが面白くなり、夢はアナウンサーになりました。
なんとしてもアナウンサーになりたい!と、入社試験の前に静岡けんみんテレビ(現静岡朝日テレビ)へ行って、お賽銭を置いて拝みましたね。短大生で受かるには、神頼みしかないと。そのおかげかどうか、無事受かってアナウンサーになれました。
ただ、報道部員と同じような仕事に追われ、合間にアナウンサーをしているような感じでした。3年間、報道の仕事もアナウンサーの仕事も分け隔てなく何でもしました。いまあるのは、そのとき放送全般の仕事をみてきたからですね。
1988年に、芸能プロダクション(有)リップスの設立にかかわりました。元アナウンサーや役者さんにタレントとして所属してもらって、テレビ出演やCMのナレーションなどが仕事でした。いまは、テレビ、ラジオCMの制作やラジオ番組・イベントの企画制作などを主にやっています。
お茶を通して人とふれあう
私がお茶のとりこになったのは、たまたま台湾の人からウーロン茶をもらい飲んでみたら、えもいわれない香りがして、しかもそれが自然な香りなので、すっかり魅せられてしまいました。お茶をもっと深く知りたくなりました。それだけ面白いものでした。
自分だけでいろいろな形でお茶を楽しんでいましたが、友人を招いてお茶会をするようになりました。その様子を写真に撮って『婦人画報』に送ったら、「秋の日のお茶会大賞」で審査委員賞を受賞しました。それからですね、「アナウンサーでお茶やっている、あの人だれ?」と注目されるようになったのは。
グリンティーツーリズムで、奥藁科にある大川地区の人たちと私を通してお茶を知った人たちが交流しています。そういう中で、静岡や島田の茶農家さんや茶問屋さんたちとも知り合い、熱い思いを聞きましたが、その思いが消費者に伝わっていないように感じました。情報をもっていても発信していない茶農家や茶問屋がほとんどです。そこで、ochaプランナーとして講座・講演・イベント企画をするようになりました。
新茶の時期にはニュースになりますが、それ以外の時期にはお茶の情報がない、というのが定説になっています。でも、お茶を楽しんだり産地をめぐる旅などをして、1年中お茶の話題を伝えていかなければならないですよね。そういう実験を、私がテレビやラジオで1年を通して伝えていこうと、行動しているところです。FM島田で、「やっぱりお茶でショー」という30分のお茶番組をやっています。週1回ですが、もう1年半もつづいています。島田地区はお茶が基幹産業なので、茶農家の人が登場したり、茶の最新情報があったり、楽しい番組になっています。
相川流お茶の楽しみ方
お茶は、飲むまでには手間がかかります。待たなくてはなりません。手間なしに飲めるのは「水出し茶」「氷出し茶」です。水や氷でいれると、お茶のうま味成分が先に出てきます。「氷出し茶」は、茶葉の上に氷をおいて時間をかけてじわじわと氷が溶けてくるのを、待つだけです。まろやかでうま味のあるお茶になります。じっくり待って、口の中に広がるうま味を楽しんでもらいたいと、消費者に伝えています。
お茶を始めてから、ものすごい「茶縁」ができました。藤枝産静岡抹茶と牛乳を入れてシェイクすると、泡立った抹茶ができるという、丸七製茶さんの商品が面白かったので、10月にグランシップで行われた「世界お茶まつり」で、音楽とお茶のコラボレーション「シェイクシェイク抹茶ライブ」を企画しました。音楽にあわせて体を動かしながらシェイクしたら、反応がすごかったですよ。新しいお茶の楽しみ方を提案できたと思います。いろんな出会いがあります。貴重な茶縁です。
お茶は、世界に通じるような面白いものを秘めていると思います。世界もそうですが、地元の人にももっともっと興味をもってもらい、たくさん飲んでもらわないと、せっかくの茶処が衰退していきますよ。食とか観光などに付帯して、おいしいものや人との出会いもほしいですね。そういうことを楽しめるイベントができないかと、いま話し合っているところです。いろいろな業種の人とも繋がっていかないと、お茶の広がりはもてないと思っています。
お茶だけでは弱いかな。地域に残っているおいしいものや宝物を、あわせて伝えていけたらいいなと思います。お茶をきっかけにそういう思いになったのは、大きな茶縁という出会いがあったからかもしれません。
お茶と向き合い始めて10年以上経ちました。最初、アナウンサーでお茶好きな人が何かやっているよといわれていましたが、このごろ、面白くやっているなと笑顔で迎えてくださるようになりました。「世界お茶まつり」などに行くと、みなさんが声をかけてくださって。やっとわかってくださるようになってきました。これからも、茶縁を広げつつお茶のプランを提案していきたいと思っています。
取材日:2010.11